12月に茶杓などで使用される「銘」と、茶道でよく取り上げられる行事・暦を勉強して銘の理解を深めていきます。
旧暦十二月は冬の最後の月、新暦12月では冬の真ん中です。
12月という年末独特の雰囲気を銘にできればうれしいですね。
茶杓などに使われる銘には季節の行事、自然の風物などが深く関わっています。
道具の取り合わせを考える上でも、季節の銘・行事などを知っておくことは大切です。
銘の意味も少し付けていますので、参考になればと思います。
銘は茶杓だけではなく、茶碗や茶入、お菓子などにも付いていますので、稽古の問答などのお役に立てればと思います。
季節の銘ではなく無季の銘が知りたい方は禅語や漢詩関連の銘の記事をどうぞ。
茶杓などに【12月の銘】
暦 こよみ
12月になると暦売りが暦を街角で売っていた
暦日 れきじつ
暦、月日 月日の経つのを年の瀬に思い返す
暦売り こよみうり
暦を売る人 十二月の風物詩
除夜 じょや
大晦日の夜
埋火 うずみび
灰に埋めた炭火
無事 ぶじ
無事是貴人から
鉢叩 はちたたき
踊念仏の一つ
茶筅売 ちゃせんうり
空也堂の茶筅売り
晩鐘 ばんしょう
夕方に鳴る鐘
閑坐 かんざ
心静かに座る 座禅
仏名 ぶつみょう
仏名会
臘日 ろうじつ
大晦日
追儺 ついな
大晦日に行われた おにやらい
大祓 おおはらえ
6月、12月の晦日に行う清めの神事
千秋楽 せんしゅうらく
興業の期間の最終日、楽日(らくび)
惜年 せきねん
終わる年を惜しむ
冬籠り ふゆごもり
冬の間家に籠って過ごす
閑居 かんきょ
世俗から離れて過ごす
初氷 はつごおり
その冬に初めて張った氷
氷柱 つらら
しずくが氷り棒状になったもの 垂氷(たるひ)とも
銀竹 ぎんちく
氷柱の異称。大雨、夕立
寒月 かんげつ
冬の冷たく冴える月
冬の月 ふゆのつき
冷たく冴えわたる
枯野 かれの
冬枯れした野原
寒燈 かんとう
寒く感じる冬の灯り
早梅 そうばい
冬に咲く早咲きの梅
蜜柑 みかん
冬の季語
散紅葉 ちりもみじ
散りゆく紅葉
餅つき もちつき
年末に餅を搗き年神様に供える
行く年 ゆくとし
暮れいく年
年越し としこし
新年前夜の行事
年の瀬 としのせ
年末
年忘れ としわすれ
年末にその年の苦労を忘れる宴
顔見世 かおみせ
歌舞伎の顔見世
雪の朝 ゆきのあした、ゆきのあさ
雪の降った朝の情景
雪折れ ゆきおれ
雪の重みで木が折れる
雪曇り ゆきぐもり
雪雲で曇ること
冬木立 ふゆこだち
冬に葉を落とした木々
年の市 としのいち
年末に正月用品を売る市
友千鳥 ともちどり
群がる千鳥
浜千鳥 はまちどり
浜辺にいる千鳥 浦千鳥
磯千鳥 いそちどり
磯にいるちどり
窓の雪 まどのゆき
孫康は窓の雪明りで勉強したという
煤払い すすはらい
新年を迎える年末の掃除
臘八 ろうはつ
臘月八日 釈迦成道の日 十二月八日
明星 みょうじょう
明けの明星を見て釈迦が悟りを開く
暁星 ぎょうせい
夜明けに残る星 明けの明星
短日 たんじつ
冬の昼の時間が短いこと
冬至粥 とうじがゆ
冬至に食べる小豆粥
冬至南瓜 とうじかぼちゃ
冬至にたべるカボチャ
六花 りっか、ろっか
雪の異称
氷花 ひょうか
草木に氷が氷結している様子
風花 かざはな
晴天時に花びらのように舞う雪
雪峯 せっぽう
峰に雪が降り積もった様子
雪片 せっぺん
雪のひとひら
細雪 ささめゆき
細かい雪 まばらに降る雪
青女 せいじょ
霜や雪を降らす女神 転じて霜や雪
冬夜 とうや、ふゆよ
冬の夜
冬ざれ ふゆざれ
草木が枯れ寂しい冬の様子
関 かん
雲門や大燈(12月寂)が連想される
冬霞 ふゆがすみ
冬にたちこめる霞
都鳥 みやこどり
今の「ゆりかもめ」 冬に渡ってくる 冬の季語
さて、12月は年越しの準備のため何かと忙しく、あっという間に大晦日を迎えてしまいます。
気忙しい12月ですが、日ごとに冬の景色が深まり茶情豊かな月でもあります。
雪の景色や、歳末のあわただしい雰囲気を銘に込めてみるのも風情があると思います。
【12月の銘】旧暦十二月の異名
- 師走 しわす
- 丑月 ちゅうげつ
- 建丑月 けんちゅうげつ
- 臘月 ろうげつ
- 極月 ごくげつ
- 四極月 しはつづき
- 弟月 おとづき、おとうづき
- 歳暮 せいぼ
- 乙子月 おとごづき
- 巌月 げんげつ
- 茶月 ちゃげつ
- 除月 じょげつ
- 末冬 まっとう 末の冬
- 春待月 はるまちづき
- 三冬月 さんとうげつ
- 年積月 としつみづき
- 梅初月 うめはつづき
- 親子月 おやこづき
- 暮古月 くれこづき
【12月の銘】行事 茶道関係の歳時記
銘として取り上げられることもある、12月の行事について見ていきます。
行事に関係する銘を付けるのも面白いと思います。
夜咄の茶事 よばなしのちゃじ
夜咄の茶事は夜会とも言われ、茶事七式のうちの一つで炉の冬至の時期に行われます。
夕刻から始まり燈火の灯りの中、幻想的な雰囲気が特徴の茶事です。
後座には石菖が使われたり、狸や狐の香合が使われるのが定番です。
事始 ことはじめ
事始は正月事始(しょうがつごとはじめ)とも言います。
京都あたりでは、昔は旧暦十二月十三日、現在では12月13日を事始として正月の年神様を迎える準備をします。
事始めは煤払いをしたり、門松のための松を山から伐ってきて準備します。
また、商家や芸妓さんたちは師匠や関係先に挨拶に行く風習があります。
毎年祇園の芸妓さんたちが師匠のところに鏡餅を納め挨拶に行く風景はニュースにもなったりしますね。
お茶やお花の家元でも、お弟子さんや社中が挨拶に行くという日です。
除夜釜
除夜釜は火や水の恩を送るために大晦日の夜に釜を掛けます。
一年を振り返り干支の道具や、過ぎた月日を思い金烏玉兎や暦手、除夜の鐘によせて尾上釜などを使ったりするのが定番です。
客が帰ると炉中に残った炭火には灰をかぶせて埋火とし、翌朝正月の大福茶に備えます。
冬至
冬至は昼が一番短く、夜が一番長い日です。
冬至には柚子湯に入り、冬至粥(小豆粥)を食べたりカボチャを食べる風習があります。
茶席に掛かることもある語の「一陽来復」には冬至の意味があったり、陰暦十一月(今の12月頃)の意味もあります。
また、陰が極まり陽が生じると考えられ、春やめでたいことがまた巡って来るという意味があります。
臘八 ろうはつ ろうはち
臘月(十二月)の八日なので「臘八」です。
12月8日は釈迦が悟りを開いたといわれる日で、成道会と言われる法要が催されます。
座禅をして八日目の明け方、明けの明星を見て悟りをひらかれたと言われます。
釈迦の成道にちなんで、禅の修行道場では12/1~12/8まで「臘八大摂心」と言われる座禅修行三昧の行事があります。
赤穂浪士の討ち入り
ご存じ、年末におなじみの忠臣蔵です。
浅野内匠頭が吉良上野介に松の廊下で斬りかかったことから始まった、主君の仇討ちのお話ですね。
史実でも出てくるかどうかはともかくとして、話しの中に出てくるアイテム(大石家二つ巴紋、桂籠、蕎麦、徳利など)を茶席に登場させることがあります。
赤穂浪士は元禄十五年十二月十四日に吉良邸に討ち入り、仇討ちを果たしています。
”桂籠”を討ち取った首に偽装したという話が有名です。
追儺 ついな
追儺は疫病や厄災を追い払うための儀式です。
元は中国の風習に基づくもので、大晦日の夜に行われた朝廷の年中行事の一つです。
現在でも民間では2月に節分の行事の豆まきとして残っています。
追儺は鬼やらい、儺遣(なやらい)とも言います。
大祓 おおはらえ、おおはらい
12月と6月の晦日に行われた宮中や神社での儀式です。
半年間の罪や穢れを祓って無病息災を祈ります。
現在でも残る6月の祓は「夏越の祓」、12月のものは「年越しの祓」と呼ばれます。
【12月の暦】二十四節季と七十二候
12月の二十四節季と七十二候をみていきます。銘をつけるときにも暦は役立ちます。
12月に来る二十四節季をそのまま銘にするというのもアリです。
- 小雪 しょうせつ
- 大雪 たいせつ
- 冬至 とうじ
小雪 しょうせつ
小雪は寒さがあまり厳しくなく、初雪が見られることも。11月22日~12月6日頃です。
- 虹蔵不見(にじかくれてみえず) 11月22日~11月26日頃
- 朔風払葉(きたかぜこのはをはらう) 11月27日~12月1日頃
- 橘始黄(たちばなはじめてきばむ) 12月2日~12月6日頃
大雪 たいせつ
雪が多くなる頃。12月7日~21日頃です。
- 閉塞成冬(そらさむくふゆとなる) 12月7日~11日頃
- 熊蟄穴(くまあなにこもる) 12月12日~16日頃
- 鱖魚群(さけのうおむらがる) 12月17日~12月21日
冬至 とうじ
冬至は12月22日頃。
昼間の時間が最も短くなり、夜が最も長くなる日です。
二十四節季としての冬至は12月22日~1月4日頃になります。
- 乃東生(なつかれくさしょうず) 12月22日~26日頃
- 麋角解(さわしかのつのおつる) 12月27日~31日頃
- 雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる) 1月1日~4日頃
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