8月によく使用される銘と、茶道との関わりの深い行事を勉強して「銘」に対する理解を深めていきます。
8月には納涼の行事などが各地で催されたりと夏真っ盛りのイメージですが、8月初旬の立秋を過ぎると暦としてはもう秋で初秋になるので、秋の銘が増えてきます。
茶杓などの茶道具につけられる銘には気候や植物、年中行事などの歳時記も深く関わっています。
銘の理解を深めて、道具の取り合わせのヒントをみつけましょう。
8月の銘の解説を少しですが付けていますので参考になればうれしいです。
銘は茶杓だけではなく、茶碗や茶入さらにはお菓子などにも付いていますので、茶道の稽古で問答の参考にしていただければと思います。
季節の銘ではなく無季のカタい銘が知りたい方は禅語や漢詩関連の銘の記事をどうぞ。
【8月の銘】茶杓の銘によく使われるもの

- 夢 ゆめ 沢庵の辞世が有名
- 舟 ふね
- 清涼 せいりょう 清くさわやか、すずしげ
- 新涼 しんりょう 秋になり涼しさを感じること
- 納涼 のうりょう 工夫をして涼しさを味わうこと
- 風鈴 ふうりん 夏にはかかせません
- 布引 ぬのびき 滝に通じる
- 飛流 ひりゅう 滝など激しく流れ落ちること
- 滝しぶき たきしぶき
- 初嵐 はつあらし 立秋後の強い風
- 稲妻 いなづま 初秋に多く稲が育つとも
- 稲光 いなびかり 稲妻と同じ
- 草の市 くさのいち 盆行事の品を売る市
- 鬼灯 ほおずき
- 姫瓜 ひめうり まくわうりの一種
- 花火 はなび 花火は元々盆の供養だった
- 駒牽 こまひき 秋の駒牽は八月十六日
- 月祭 つきまつり 八月十五日の月を観ること
- 氷室 ひむろ 氷を貯蔵する処 謡曲にも
- 浦風 うらかぜ 海辺に吹く風
- 村雨 むらさめ にわか雨 叢雨
- 芋名月 いもめいげつ 陰暦八月十五日の名月
- 衣被 きぬかずき 里芋のこと きぬかつぎとも
- 初萩 はつはぎ 秋になって初めて咲く萩
- 山萩 やまはぎ
- 萩の露 はぎのつゆ 萩に降りた露 箏曲にも
- 後の雛 のちのひな 八朔または重陽の節句の雛
- 桐一葉 きりひとは 一葉落而知秋から
- 迎え火 むかえび 先祖の霊を迎える火
- 送り火 おくりび 先祖の霊を送る火
- 遠花火 とおはなび 遠くに見える花火
- 蝉時雨 せみしぐれ 多くの蝉が鳴く様子
- 秋の蝉 あきのせみ 秋になって鳴いている蝉
- 蜩 ひぐらし 明け方や夕方に鳴く
- 花灯籠 はなどうろ 造花などで作った灯籠
- 灯籠流し とうろうながし 盆の終わりに仏を送る
- 面影 おもかげ 盆に故人を偲ぶ
- 夏木立 なつこだち 夏の生い茂った木々
- 撫子 なでしこ 撫子の花
- 常夏 とこなつ 撫子の異名
- 虹の橋 にじのはし 虹を橋に見立てた
- 木陰 こかげ 日の光の当たらない木の陰
- 緑陰 りょくいん 茂った木々の陰
- 清瀧 きよたき、せいりゅう
- 秋風 あきかぜ
- 朝露 あさつゆ 露は秋の季語
- 忍草 しのぶぐさ 故人を偲ぶに通じる
- 雲井 くもい 大空、雲のある処
- 盆の月 ぼんのつき 陰暦七月十五夜の月
- 天の川 あまのがわ
- 秋の星 あきのほし
- 星月夜 ほしづきよ 月が出ず星が明るい夜
- 秋の雲 あきのくも 秋によく見られる特徴的な雲
- 中元 ちゅうげん 陰暦七月十五日が中元
- 盆踊り ぼんおどり
- 秋草 あきくさ
- 西瓜 すいか
- 青瓢 あおふくべ 青い瓢箪
8月はまだまだ暑い日が多く、暦の上では秋と言われても実感がないのですが、やはり秋にふさわしい感じの銘がだんだんと使われてきます。
【8月の銘】旧暦八月の異名

陰暦八月の異名を知ると、銘を考えるときの参考になります。
- 葉月 はづき
- 葉落月 はおちづき
- 穂張月 ほはりづき
- 初雁月 はつかりづき
- 雁来月 がんらいげつ
- 酉月 ゆうげつ
- 建酉月 けんゆうげつ
- 南風月 はえづき
- 秋風月 あきかぜづき
- 燕去月 つばめさりづき
- 盛秋 せいしゅう
- 月見月 つきみづき
- 観月 かんげつ
- 壮月 そうげつ
- 素月 そげつ
- 桂月 かつらづき
- 仲秋 ちゅうしゅう
- 仲商 ちゅうしょう 商は秋にあたる
- 萩月 はぎづき
- 田の実 たのみ
- 紅染月 こぞめづき 木染月、濃染月
- 其色月 そのいろづき
- 迎寒 げいかん
- 南呂 なんろ、なんりょ
- 清月 せいげつ
- 唐月 もろこしづき
- 草津月 くさつづき
- 竹春 ちくしゅん 竹の春 竹の新葉が出ることから
陰暦八月はもう完全に秋という感じですので、夏を感じさせる名前は見当たりません。(陰暦では秋は七、八、九月)
ちなみに、名月を鑑賞する八月十五日というのは今の暦ではだいたい9月下旬頃になります。
【8月の銘】二十四節季と七十二候

8月の暦について少し見ていきます。
暦は銘をつけるときにも役立ちます。そのまま銘にすることもできます。
大暑 たいしょ
7月23日~8月7日頃。大暑は暑さが最も厳しいころです。
- 桐始結花 きりはじめてはなをむすぶ 7月23~28日頃
- 土潤溽暑 つちうるおうてむしあつし 7月29~8月2日頃
- 大雨時行 たいうときどきふる 8月3~7日頃
立秋 りっしゅう
8月8日~22日頃。立秋を過ぎると、暑さは残暑と呼ばれます。
- 涼風至 すずかぜいたる 8月8~12日頃
- 寒蝉鳴 ひぐらしなく 8月13~17日頃
- 蒙霧升降 ふかききりまとう 8月18~22日頃
処暑 しょしょ
8月23日~9月7日頃。処暑は暑さが止むという意味。
- 綿柎開 わたのはなしべひらく 8月23~27日頃
- 天地始粛 てんちはじめてさむし 8月28~9月1日頃
- 禾乃登 こくものすなわちみのる 9月2~7日頃
【8月の銘の参考に】年中行事・雑節 茶道関係の歳時記

8月の年中行事から銘をつけることもできますので、茶道で出てくる行事を見ていきます。
八朔 はっさく
八朔は旧暦八月一日。八月朔日ということです。
この日に宮中へ稲の初穂を献上していました。
田実の節(たのむのせち)、 田の実節句(たのみのせっく) とも言います。
お世話になった人に送り物をしたり、挨拶に伺うという風習があり祝儀の日とされます。中元の挨拶はこの日から始めます。
徳川家康が江戸城に初めて入った八朔を武家では祝日として、白帷子で登城し将軍へ挨拶をしていたようです。
今でも、学問や習い事の師匠のお宅へ挨拶に伺ったり、お茶の家元のところに出入りの職方が挨拶に行ったりします。
また、八朔の異名として嫁節供というのがあり、八朔に贈り物を持たせ新嫁を里帰りさせる風習があるようです。
盂蘭盆会 うらぼんえ
いわゆるお盆のこと。盆供(ぼんく)、魂祭(たままつり)、精霊会(しょうりょうえ)ともいわれます。
先祖の霊が自分の家に帰ってくるのを迎える行事です。
東京では7月に、その他のほとんどの地域では8月に行われます。
地蔵盆 じぞうぼん
地蔵菩薩の縁日で、子供が主役のお祭のような日。近畿地方を中心に行われています。
町内の辻の地蔵菩薩にお供えをして、子供におやつや食事を振る舞ったりして子供の加護を祈ります。
旧暦七月二十四日に行われるものを特に言い、現在多くは8月24日に行われます。
中元 ちゅうげん
陰暦の七月十五日。
一月十五日を上元、七月十五日を中元、十二月十五日を下元と言います。
神様にお供えをして、神様に人の罪の許しを請うような意味合いがあるそうです。
この時期に贈り物を送ったりするのをお中元と言ってます。現在では新暦の7月にお中元を贈ったりしてますね。
中国ではこの日に盂蘭盆会をおこなっていたのが日本でも踏襲されて、七月に行っていたものが新暦になり、盂蘭盆会は結局いまの8月に行うところが多いです。

コメント