11月(霜月)に茶道のお稽古などで使える「銘」について勉強します。
さらに、炉開きの時期である11月にある茶道の行事や暦も知ることで、銘を自分で考えることもできるようになります。
恐る恐る先生に「どんな銘が良いでしょうか。。?」と尋ねる必要はもうありません(笑)。
茶道で使う銘には季節の行事、自然の風物などが深く関わっていることを意識してください。
11月の歳時記を知ることで銘だけでなく、道具の取り合わせのヒントにすることもできます。
また載せている銘は茶杓だけでなく、茶入・茶碗・花入・菓子などにも使えますのでさまざまな道具の問答のときにも役立てていただく事ができます。
季節の銘ではなく無季の銘が知りたい方は禅語や漢詩関連の銘の記事をどうぞ。
【11月の銘】霜月 茶杓の問答などに
11月は紅葉や玄猪の祝に関する銘が多いです。
また、風炉の季節が終わり茶室の炉を開く”炉開き”や茶壺の”口切”があります。
茶道の冬のシーズンが始まります。
- 口切 くちきり 茶壷の口を切る
- 神楽 かぐら 神に祈る歌舞
- 時雨 しぐれ 晩秋から冬のにわか雨
- 秋の村雨 あきのむらさめ 秋に降る村雨
- 寒山 かんざん 寒々とした冬の山
- 錦秋 きんしゅう 錦のように紅葉している秋
- 木枯らし こがらし 晩秋から初冬にかけて吹く強風
- 初霜 はつしも その冬初めての霜
- 霜柱 しもばしら
- 朝霜 あさしも 朝降りる霜
- 霜夜 しもよ 霜が降りる寒い夜
- 初雪 はつゆき その冬初めての雪
- 青女 せいじょ 霜や雪を降らす女神 転じて霜や雪
- 冬霞 ふゆがすみ 冬に立つ霞
- 清滝 きよたき 紅葉の名所 嵯峨にある歌枕
- 蔦紅葉 つたもみじ 紅葉した蔦
- 紅葉狩 もみじがり 紅葉の鑑賞 謡曲にも
- 紅葉の賀 もみじのが 紅葉の頃の祝宴
- 梢の錦 こずえのにしき 紅葉のこと
- 山の錦 やまにしき 紅葉を錦に例えた
- 山粧う やまよそおう 紅葉で美しくなった山
- 峯の紅葉 みねのもみじ 峯を彩る紅葉
- 小倉山 おぐらやま 嵯峨にある山 紅葉の名所
- 竜田川 たつたがわ 奈良の紅葉の名所 立田川
- 竜田姫 たつたひめ 竜田山の女神、秋を司る
- 柴の戸 しばのと 柴でできた戸や門、粗末な住処
- 柴垣 しばがき 柴で編んだ垣
- 霜枯れ しもがれ 霜にあって枯れること
- 小男鹿 さおしか オスの鹿
- 大原女 おはらめ 京で薪などを売る大原の女性
- 酉の市 とりのいち 大鷲神社などで行われる
- 敷松葉 しきまつば 霜よけで敷かれる松葉
- 干し柿 ほしがき 渋柿を干す
- 吊るし柿 つるしがき 渋柿を吊るして干す
- 御所柿 ごしょがき 奈良県御所の柿
- 亥の子餅 いのこもち 亥の子で食べられる餅
- 宮参り みやまいり 七五三のお宮参り
- 北山時雨 きたやましぐれ 京都北山の方から降る時雨
- 里時雨 さとしぐれ 里に降る時雨
- 初時雨 はつしぐれ 最初の時雨
- 小夜時雨 さよしぐれ 夜に降る時雨
- 薄野 すすきの ススキが群がり生える野
- 勝栗 かちぐり 殻、渋皮を取ったもの 搗栗
- 山居 さんきょ 山の中の住まい
- 冬日和 ふゆびより 冬晴れ
- 冬めく ふゆめく 冬らしくなる
- 冬浅し ふゆあさし 冬に入ったばかりの頃
- 小春 こはる 陰暦十月の異称 春を思わせる暖かさ
- 短日 たんじつ 冬の昼間の短い日
- えびす講 えびすこう えびす神を祀る
- 玄猪 げんちょ 亥の月亥の日の祝い
- 亥の子 いのこ 亥の月亥の日の祝い
- 十日夜 とおかんや 陰暦十月十日の祝い
- 北風 きたかぜ 北から吹く冷たい風
- お火焚 おひたき 鞴祭 冬の火祭り
- 狐 きつね
- 落葉 おちば、らくよう
- 夜半の冬 よわのふゆ 冬の夜ふけ
- 冬構え ふゆがまえ 家の周囲の冬の備え
- 帰り花 かえりばな 返り咲きの花 返り花
霜月【11月の銘】旧暦十一月の異名
- 霜月 しもつき
- 子月 ねづき
- 建子月 けんしげつ
- 神楽月 かぐらづき
- 暢月 ちょうげつ
- 復月 ふくげつ 一陽来復
- 達月 たつげつ
- 葭月 かげつ
- 仲冬 ちゅうとう 冬の二番目の月
- 神帰月 かみかえりづき 出雲へ行った神が帰る
- 神来月 かみきづき 出雲へ行った神が帰って来る
- 霜降月 しもふりづき
- 霜見月 しもみづき
- 雪見月 ゆきみづき
- 雪待月 ゆきまちづき
- 顔見世月 かおみせづき 歌舞伎の顔見世がある
- 一陽来復 いちようらいふく 陰が極まり陽が生じる 冬至
開炉の時期の茶会などで「一陽来復」という掛け軸がかかったりしますが、陰暦十一月(今の12月頃)や「冬至」の異名だったりします。
でも開炉は今の11月頃ですから、なんだか変な感じが。。。したりもします。
亥の月というのは陰暦十月(いまの11月頃)ですからね。。
さて、11月はいよいよ本格的な冬ですから、雪のつく異名もでてきますね。
先月は神無月で神様がいない月でしたが、神様が帰ってくるという事で「神帰月」「神来月」なんて名前があるのが面白いです。
【11月の暦】行事 茶道関係の歳時記
茶道にも関係する11月の行事などを見て行きます。
行事に関する事柄を茶杓の銘として取り上げるのも、面白いと思います。
開炉(かいろ)・炉開き(ろびらき)
開炉というのは炭を熾し、釜を掛ける茶室の「炉」を開くことです。
”お茶の情緒たっぷりな炉”を開く月ですので、この時期は茶人の正月という言われ方をします。
だいたいは11月朔日から炉開きとするところが多いと思いますが、炉を開くタイミングはいくつかあります。
- 11月1日
- 亥の月(陰暦十月)の亥の日
- 立冬
- 寒くなってきたら
陰暦十月(亥の月)亥の日に炉を開くというのは、陰陽五行説では「亥」は水に配されるので、亥の日に炉を開けば火事にならないと考えられていたからです。
亥の月にも亥の日は複数回あり、上の亥の日には武家が、中の亥の日には町衆が”炉”や”こたつ”を使い始める習わしでした。
いずれにしても「炉開きは必ずこの時に」というものはありません。
利休は炉を開く時期は「柚子の色づくを見て」と言ったそうですので、それぞれの地域や寒さによって炉を開く日を考えても良いはずです。
口切 くちきり
11月になると茶壷の口を切って、その年収穫されたお茶を味わいます。
初夏に収穫されたお茶の葉は、碾茶にした状態で半年間茶壷に寝かされていますので石臼で挽いて抹茶にします。
口切の茶事ではお客様の前で茶壷の口を切り、その中に入っているお茶を取り出して挽きます。
懐石の間に石臼で挽く音が聞こえるのが、口切茶事の風情を一層味わい深くさせます。
亥の子 玄猪の祝 十日夜
関西では亥の子(いのこ)や玄猪(げんちょ)などと呼ばれ”亥の月亥の日”にお祝いの行事が行われます。
東日本でこれにあたるのは十日夜(とおかんや)で陰暦十月十日に行われる刈り上げ行事です。
つまりはどちらも収穫祭。
稲の収穫の感謝と来年の豊穣を祈り、餅などを神様に供える行事です。
亥の月、亥の日、亥の刻に「亥の子餅」を食べれば、万病を除くことができると信じられてきました。
元々は中国に穀物を混ぜた餅を食べる風習があり、それが玄猪の祝につながっています。
亥の日に摂津能勢から宮中や幕府へ亥の子餅(玄猪餅)を献上されたり、天皇が餅を搗く行事がありました。
餅は臣下にも下賜され、その餅の色が官職によって決められています。
上亥、中亥、下亥の日によって下賜される餅の包みに添える物(銀杏と忍草など)が異なり、今では玄猪包香合でその様子が伺えます。
京都の護王神社の亥子祭は玄猪の祝の宮中行事の再現をしていて、一般人も見学ができるので、とてもおススメな行事です。
紅葉狩り
紅葉狩りは古くから行われており、和歌にも多く詠まれています。
”ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは”(在原業平)という歌が百人一首にあったりして、紅葉を讃える歌を何かしら一度は聞いたことがあると思います。
万葉集では紅葉よりも「黄葉(もみち・もみちば)」と書く場合が多いそうです。
幔幕・火炎太鼓・鳥兜などに関する道具があると源氏物語「紅葉賀」を連想させることが出来たりします。
秋の茶席を華やかにするにはもってこいの題材です。
宗旦忌 そうたんき
千宗旦(1578~1658)は千利休の孫で三千家の共通の先祖です。
忌日は十二月十九日ですが、1か月繰り上げて裏千家で11月19日に追善の大寄せ茶会が行われます。
宗旦忌には宇治の上林春松の御茶壺道中があり、裏千家の家元まで茶壷を運ぶ姿を見ることが出来ます。
裏千家の門人は”宗旦忌が過ぎたら銀杏を食べて良い”なんて言われたりします。
七五三
七五三は子供の節目の年に、成長を祝う風習です。
七五三の名で一般に広まったのは明治以降だということです。
地域によって年齢が違ったり、男女の違い、日にちの違いがあったりします。
陰暦十一月十五日に綱吉の袴着の儀式を行ったことから、11月15日に行われるという説もあります。
- 3歳男女児は髪置(かみおき)
- 5歳男児は袴着(はかまぎ)
- 7歳女児は紐落(ひもおとし)/帯解き
を行い、子供の成長を祝います。
新嘗祭 にいなめさい しんじょうさい
新嘗祭はしんじょうさいとも読みます。
天皇がその年に収穫された新穀を、日本のすべての神々に供え感謝し、みずからも食す収穫祭です。
古くは旧暦十一月の2番目の卯の日に行われていましたが、現在では11月23日(勤労感謝の日)に行われます。
新嘗祭は宮中以外でも全国の神社で行われています。
また、大嘗祭(だいじょうさい)は新しい天皇が即位した最初の新嘗祭です。
新嘗祭までは新米を食べるのは慎むという、古風な習慣があります。
【11月の暦】二十四節季と七十二候
11月の暦についてみていきます。暦は銘をつけるときにも役に立ちます。
二十四節季などをそのまま銘にしてしまうのもアリだと思います。
11月に来る二十四節季は
- 霜降 そうこう
- 立冬 りっとう
- 小雪 しょうせつ
です。二十四節季の中に初候・次候・末候の七十二候がそれぞれ三つずつ入っています。
霜降 そうこう
霜降は寒さが増して、霜が降り始めるころ。10月23日~11月6日頃です。
- 霜始降(しもはじめてふる) 10月23日~27日頃
- 霎時施(こさめときどきふる) 10月28日~11月1日頃
- 楓蔦黄(もみじつたきばむ) 11月2日~11月6日頃
立冬 りっとう
立冬は冬の兆しが見え始める頃、暦の上では冬が始まります。11月7日~21日頃です。
- 山茶始開(つばきはじめてひらく) 11月7日~11月11日頃
- 地始凍(ちはじめてこおる) 11月12日~11月16日頃
- 金盞香(きんせんかさく) 11月17日~11月21日頃
小雪 しょうせつ
小雪は寒さがそこまで厳しくなく、早ければ初雪が見られます。11月22日~12月6日頃です。
- 虹蔵不見(にじかくれてみえず) 11月22日~11月26日頃
- 朔風払葉(きたかぜこのはをはらう) 11月27日~12月1日頃
- 橘始黄(たちばなはじめてきばむ) 12月2日~12月6日頃
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