【寒山拾得・蝦蟇仙人】 絵の掛物の画題について

寒山拾得 茶道具
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今回は茶席の掛け軸の画題についてです。

「寒山拾得」と「蝦蟇仙人」について勉強していきます。

さて、茶席に掛かる掛物は文字のみが書いてある掛け軸を見る事が多いですが、絵が描いてある掛け軸の場合もあります。

文字でしたら、なんと書いてあるのかが判れば意味は何となく分かりますが、絵の場合だとヒントが少なくて何が描いてあるのかすら判断するのはけっこう難しいです。

花の絵だったりすると「季節の物なのかな?」とヒントもありますが、何やら不気味な笑みを浮かべている正体不明な不気味ブラザーズ(笑)が描かれてかれていたりすると

「まったく判らないんだけど?」というような事がないでしょうか。

特に古い道具を使用する茶会なんかにはそういった判りづらい絵が出てくる事が多いと思います

実はそういった古い掛軸に描かれている絵というのはたいていの場合、伝統的にスタンダードな画題で、昔はお茶をやっているような教養のある人であればわりと直ぐに解るというもののようです。

昔の人は教養あったんですね。。。(遠い目)

茶席で亭主の話を聞いて「ああそうか」と思うのも良いですが、せっかくですので亭主の話を聞かなくても掛物や道具を見て、「こういうテーマでやっているんだな」とか、「これはこういう事を意味しているんだな」なんて理解ができるようになりたいものです。

ということで、今回は茶席で掛けられる掛物でよくとりあげられる画題の

  • 寒山拾得
  • 蝦蟇仙人(がませんにん)

の特徴を見ていきます。

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「寒山拾得」は寒山と拾得という人物

寒山拾得

さきほど書いた怪しげな笑みをたたえる不気味ブラザーズというのは寒山(かんざん)と拾得(じっとく)という人物です。

それぞれに描かれるときの特徴があって

  • 寒山 … 巻物(経巻)を持っている、笑っている
  • 拾得 … 箒を持っている、笑っている

という特徴があります。いずれにしても笑ってます。

二人とも怪しげな笑顔で、キャラクターを特徴付ける箒などのアイテムを手に持っていたり、近くに描かれてたりしています。

不気味な笑みの二人ですが、なぜかお茶の世界ではよく出てきます。

茶禅一味と言われたりするように、禅とお茶の関係はとても深いということですね。

拾得は国清寺の豊干禅師に拾われてきて、お寺で厨房の仕事をしていました。

また、寒山はたまたま寺に行った時、拾得から飯をもらって仲良くなったという隠士です。

寒山拾得の二人は奇行が多かったそうですが、世俗を超越している尊い人物と考えられていて、禅機画としてよく描かれます。

美術館で行われる茶の湯関係の展観ではかなりの頻度でこの二人は登場してきます。

寒山は文殊菩薩、拾得は普賢菩薩の化身と言われていますので、とてもありがたいお二人なのです。

また寒山詩(寒山が書いたと言われてる)の中の一節が一行になっている掛軸もよく見かけます。

なかでも「白雲抱幽石」という語句はよく見る言葉だと思います。

豊干

寒山・拾得の周りにいた人物もついでに勉強しましょう。

寒山・拾得と一緒に描かれる事も多い人物で、豊干(ぶかん)という人がいます。

この「豊干」という人物はたいていと一緒に描かれています。

虎の上に乗ったお坊さんらしき人物が描かれていたら、「豊干かな?」と予想すると、けっこう当たります。

豊干は中国・唐時代のお坊さんで、寒山拾得のいた天台山の国清寺に住んでいたと言われます。

豊干も奇行で知られており虎に乗っていたり、寒山、拾得という変わった人物とつるんでいたりと、なかなか変わったお坊さんです。

寒山、拾得、豊干、虎の4人(3人と一匹)がみんな眠っている絵がありますが、これを四睡図と言います。

四睡図は道釈人物画の一つで、禅の真理、境地を表すとされています。

蝦蟇仙人(がませんにん)

蝦蟇仙人(がませんにん)は中国の仙人の一人で、一説では中国の渤海の出身、名を劉哲と言うそうです。

髪は乱れて、裸足で笑いを浮かべながら、青蛙神というヒキガエル(蟾蜍)の霊獣を従えています。このカエルはアオガエルではないそうです。

青蛙神は三本足の蛙というのが特徴です。

蝦蟇仙人は3本足のカエルと一緒に描かれているのがポイントで、特徴を知っていればけっこう簡単に判断できます。

以前、蝦蟇仙人を知らない時に美術館で寒山か拾得かなと思ったら蝦蟇仙人だったという事がありました。

その蝦蟇仙人はやっぱり不気味な笑みを浮かべていて、いつものあの寒山拾得のどちらかと思ったんですが、よくみると3本足のカエルと一緒にいます。

キャプションには蝦蟇仙人

不気味な笑みだけでは誰なのか判らないんだな(笑)と勉強になりました。

本人の特徴だけでなく、周りに書かれているアイテムや動物、人物なども判断する材料にしなくてはいけないということを知りました。

鉄拐仙人(てっかいせんにん)

ちなみに蝦蟇仙人と双幅でよく登場する鉄拐仙人(てっかいせんにん)という人がいます。

名前は李鉄拐

鉄拐仙人は息を吐いて(分身を出す術)、杖を持っているのが特徴で、八仙人の一人です。

鉄拐仙人の顔色が悪く、杖を持っている理由は

「魂だけで老子に会いに行った後、弟子に預けておいた自分の体が燃やされてしまい、帰る体が無かったので足の”悪い飢え死にした屍”に憑いたから」だそうです。

なんともマヌケな仙人の話でウケます。

鉄拐仙人と蝦蟇仙人が、セットで双福になっているのが定番なのはナゼなのか不明ですが、双幅で描かれている頻度は高いです。

京都国立博物館の蝦蟇鉄拐図

仙人道釈人物画として絵の掛物の中でたくさん登場しますので、八仙人など有名どころは覚えておいても良いかもしれません。

寒山拾得・蝦蟇仙人 絵の画題について まとめ

こんな感じで、描かれている人物の持ち物とか一緒に描かれている物などで人物を特定できることが多いということを覚えておくと、かなり役に立ちます。

  • 寒山 笑っている、巻物
  • 拾得 笑っている、箒

何やら怪しげに笑う表情の二人が巻物と箒を持っていたら、まず寒山拾得と考えて良いと思います。

  • 蝦蟇仙人 三本足のヒキガエルと一緒
  • 鉄拐仙人 息を吐いて、杖をもっている

この二人の仙人はカエルがいたり、息を吐いていたりするので、知っていれば高い確率で当てることができます。

掛軸だけでなく、香合なんかでも人物図が彫られていたりすると、誰なのか判ることが意外に多いですね。

滝を見ている人、耳を洗っている人、牛を連れている人、などなど。

人物に関する特徴や有名なエピソードの知識があれば、茶席の亭主の意図に気付けたりするかもしれません。

絵を見るときには知識が必要なんですね。教養というのは難しいものです。

私も茶席や美術館では掛物などをよーく見て、どういう人物なのか疑問を持つようにしたいと思います。

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ということで、今回は【寒山拾得・蝦蟇仙人】 絵の掛物の画題について という話でした。

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