茶道をやっている中でよく出てくる言葉で織部(おりべ)ってありますよね。
「お茶碗は?」と聞いて「織部です」とか。
釉薬を見て「織部ですね」とか言う人がいたり。
背が高い細長い茶入だなと思ったら、「織部です」と言われたり。
ひしゃげた水指を見て「いかにも織部だね」とか言ったり。
織部って何??って思いませんか?
この記事を読むと織部の意味で戸惑う事は、ほぼ無くなります。たぶん。
織部の意味は主に4つ
織部の意味は主に4種類あると思います。
- 古田織部という人名
- 織部釉という意味
- 織部好の形という意味
- 織部好の文様という意味
これ以外にもあるかと思いますが、これくらいわかっておけば、おそらく充分です。
形、文様、釉薬は全て織部好みという大きなカテゴリーの中に入ると思いますが、わかりやすくするために別としてます。
多くの方は古田織部の名前は既に知っていると思いますので、人の名前を指しているということは直ぐにわかると思います。
でもそれだけだと、例えば水指が「織部だ」とか言われても、
「作者が織部かな?」とか思ってしまいますね。
でも水指で織部作っていうのは無いです。なんだかよくわかりませんよね。
どれも古田織部という人物から来ているのは間違いないんですけど、それぞれ少し意味が異なるので解説していきます。
古田織部の人名を指す場合
皆さんご存知だと思いますが、
古田織部こと古田重然(しげなり)は利休の弟子で、利休切腹の直前には淀の船着場まで細川三斎と見送りに行ったという人です。
なかなかアツい🔥人ですね。
また、小堀遠州の師で、天下一の茶の湯名人とまで言われた人です。
当然武家の茶人の中でかなり影響力がある人だったと思いますが、最期は切腹させられています。
調べたんですが、辞世の句が見つからないのは何故でしょうか。。。
まぁそれは置いておいて。
さて、茶会の道具の説明の時なんかに茶杓、竹花入、掛物が「織部です」と言われた時には、織部が作った(書いた)物という意味になります。
たとえば茶席の説明で「えぇ~今日は織部の掛物です。三藐院へ宛てた書状の内容は…」
なんて具合に話されることありますね。
これは”古田織部という人物が近衛信伊宛てに書いた書状の掛軸ですよ”という意味ですね。
というわけで「織部」という言葉が人物の名前として使われる場合には、すぐにピンとくるんじゃないかなと思います。
ところで、織部についてわかりやすく知るにはへうげものという漫画がおススメです。
古い茶書に書かれている逸話もたくさん漫画の中に出てくるので、こんなことあったのか!と勉強になるポイントが多いですのでおススメです。
織部釉(緑釉)を指す場合
織部釉というのは器を酸化焼成したときに緑色に発色する、酸化銅の入った釉薬の事です。
要するに、緑色の釉薬の事だなと思ってください。
この緑色も織部好みといわれます。
織部釉が掛かっているのは、向付や鉢、皿が多くて、織部釉の掛かった物を青織部と言ったりします。
この緑色は銅による発色ですので、当時の日本の銅の生産量が高まったことと関係があるのかもしれないですね。
青織部の他に
- 織部黒 おりべぐろ
- 黒織部 くろおりべ
- 赤織部 あかおりべ
- 総織部 そうおりべ
- 鳴海織部 なるみおりべ
- 志野織部 しのおりべ
- 弥七田織部 やしちだおりべ
- 唐津織部 からつおりべ
などなど沢山ありますが、この中には緑釉の事を言っていたり、織部好の事を言っていたりと複雑なので今回は解説しません。
いずれにしても、織部釉といえば緑色の釉薬の事を指していて、この時は織部の人物その人の事を言っているわけでは無いということです。
そんなわけで、緑釉が掛かった器であれば織部と言われたりします。
特にお稽古物の道具は、全く織部的な雰囲気がしないものでも緑色だったら「織部茶碗」とかになってたりします。
織部好(おりべごのみ)の形を指す場合
織部好の形といってもかなり範囲が広くなってしまいますが、いくつか特徴があります。
まとめると
- 背が高い
- 左右が非対称
- 歪んでいる
- 作行が荒々しい
こういった器の形を織部好の形だと思ったら良いと思います。
織部好の形というものはさらに具体的にはどんな形なのでしょうか。
織部好の茶入
織部好みの茶入は ”直径に対して高さのある形” になっているものが多く、見た目の印象はやや細長い感じを受けます。
有名なものでは「餓鬼腹」という銘の茶入が有名です。と言っても箱は遠州の書付ですけど。。
古田織部は背の高い茶入が好みで、薩摩焼の茶入の指導で「もっと背を高くした方が良い」というようなことを書いている手紙が残っているのが有名です。
織部好の中次
中次にも織部好の中次がありますが、通常の中次よりも ”細長い形” をしていて、背が高く見えるようなシルエットに感じます。
以前に藤重の作で織部好の中次を見たことがあります。
通常の藤重の中次よりも直径が細く背も少し高かったと記憶しています。
織部好の水指
水指の織部好の特徴は ”耳付で、耳の形や位置が左右対称では無い” ということです。
水指自体の形も轆轤で挽いたままの形ではなく、そこから歪ませて、ヘラを入れたりしています。
ちなみに織部が絶賛したとして有名な五島美術館の「破袋(やぶれぶくろ)」という伊賀の水指があります。
破れ袋は織部のエピソードが有名です。
実はもう一つ同じ銘で個人蔵の伊賀の水指がありますが、どちらも重文(重要文化財)だそうです。
この二つは何やらいわくがありそうですので、水指の次第を見てみたいですが、燃えてしまっている等もありますので叶わぬ夢かなと。
織部好の茶碗
歪んだ織部好の代表的なものは茶碗だと思います。
例えば織部の花押が書いてある黒織部茶碗(佐川美術館のサイト)があります。
黒織部の茶碗は真円の形ではなく横につぶれたような沓形になっています。
また、口造は玉縁になっていて、これも織部好みの茶碗の大きな特徴になります。
古田高麗という織部所持していた「御所丸茶碗」や美濃の「織部黒」の茶碗も口造が玉縁で沓形です。
織部好みの茶碗にはそういった共通点があるんだということを覚えておくと面白いと思います。
荒々しい作行きな織部好
織部好みの造形は作行が大胆で荒々しい形をしています。
荒々しい形の茶道具といえば、先ほどの伊賀の「破れ袋」は
- 釉薬
- 形
- 割れ
- 肌
そのすべてが荒々しい作りになっていて、織部の好みが良くわかると思います。
他にも花入ですが「生爪」という銘の花入も荒々しいですよね。
このページのアイキャッチ画像は生爪写しの花入れですので、参考にみていただければと。
織部茶碗にも荒々しい好みの方向性が影響していると思われる形が多いですね。
織部好みの形の茶杓
織部の茶杓はあまり突拍子もない造形ではないところが意外です。
織部は節のあたりに石割が入った茶杓を削っていることが多いです。
完成したあとに乾燥して竹が割れてしまったのではなく、そういう竹を選んで削っています。
やはり、ちょっと普通とは違うような竹を選んできているのが印象的です。
織部好みの模様
織部好みの模様といえば裂地の話しみたいですが、今回は茶碗などに描かれる模様のことです。
つまり黒織部茶碗や織部の食器に描かれているような模様は織部好といわれる模様です。
織部模様と言ったりもします。例えば
- 吊るし柿のような文様
- ギザギザの鋸歯文
- 丸、三角、四角の連続した文様
などなど。
現代でも様々なデザインに取り入れられている文様なので、見つけると面白いです。
織部の意味のまとめ
織部の意味は大きく4種類あります。
- 人物の名前
- 緑釉の意味
- 織部好の形
- 織部好の文様
この4つがわかれば、織部の意味を理解するのにかなり助けになるのではないかと思います。
利休の弟子でありながら、利休とは全く違う好みの方向性を持った古田織部という人間は、非常に興味深いですよね。
現代のデザインにも絶大な影響力を持つ「織部」というものにぜひ注目してみてください。
以上、「織部」とは オリベの意味はいくつもあるという話し でした。
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