茶道で4月によく使用される銘と、4月に関わりの深い行事を勉強して、銘に対する理解を少し深めていきます。
茶杓などにつけられる銘には年中行事や植物などが深く関わっています。
銘が何から付けられているのかを知ると、自分で銘を考えるときの材料になります。
季節の銘ではなく無季のカタい銘が知りたい方は禅語や漢詩関連の銘の記事をどうぞ。
4月によく使用される銘
- 初桜 はつざくら 咲いて間もない桜
- 山桜 やまざくら
- 桜人 さくらびと 桜をめでる人
- 桜狩 さくらがり 花見のこと
- 糸桜 いとざくら 枝垂れ桜の異称
- 甘茶 あまちゃ 花まつりで誕生仏へ注ぎかける
- 花まつり 釈迦の生誕を祝う 灌仏会、仏生会、花会式とも
- 若葉 わかば
- 落し角 おとしづの 鹿の角が抜け落ちること 忘れ角
- 花衣 はなごろも 花見に着る晴れ着 襲の色目の名前
- 桜川 さくらがわ 茨城県を流れる川 謡曲にも
- 花筏 はないかだ 川の水面を流れるさくらの花びら
- 花霞 はながすみ 桜の花が遠目で霞がかかったように見えること
- 小袖幕 こそでまく 花見の際、小袖をかけて幕の代わりとした 花見幕
- 花筐 はながたみ 花かご 謡曲にも
- 春雨 はるさめ 春のふりつづくあめ
- 春時雨 はるしぐれ 春のにわかあめ
- 春雷 しゅんらい
- 春霞 はるがすみ
- 八重霞 やえがすみ 深い霞が立ち込める様子
- 八重桜 やえざくら 八重桜は桜の中では遅い開花
- 夜桜 よざくら
- 夢見草 ゆめみぐさ 桜のこと
- 緑苔 りょくたい 青苔(せいたい)
- 柳絮 りゅうじょ 白い綿毛のついた柳の種が飛ぶこと
- 熊野 ゆや 謡曲にある
- 朧月 おぼろづき
- 花影 かえい 月の光などによってできる桜の花の影
- 玉笛 ぎょくてき 春夜洛城聞笛
- 花曇 はなぐもり 桜の時期の曇り空
- 百千鳥 ももちどり 鶯のこと 多くの鳥がさえずっている様子
- 花の雨 はなのあめ 桜の時期に降る雨
- 杏花雨 きょうかう 清明のころ降る雨
- 花宴 はなのえん 花見をしながらの宴 源氏物語にも
- 花の幕 はなのまく 花見の際に張る幕 花見幕
- 春月 しゅんげつ 春の夜の月 朧月
- 吉野山 よしのやま 桜の名所
- み吉野 みよしの みは接頭語
- 嵐山 あらしやま 桜の名所 吉野の桜を移植
- 都をどり みやこおどり 祇園甲部歌舞練場
- 花あかり はなあかり 満開の桜で夜でも明るく感じられる
- 井出の里 いでのさと 井出はヤマブキの名所、歌枕 井出の玉川
- 茶摘み ちゃつみ
- 種蒔き たねまき
- 揚げ雲雀 あげひばり 雲雀が高く舞い上がって鳴く 告天子、天雀
- 苗代 なえしろ 稲の苗をそだてる所
- 田打ち たうち 田起こしのこと
- 別れ霜 わかれじも 晩春の霜
- 藤波 ふじなみ 藤房が風にゆれるさま
- 岩躑躅 いわつつじ 岩のほとりに咲く躑躅
四月は桜の花の盛りですので、桜に関する銘がとても多いです。
さらに山吹、菜の花、躑躅などたくさんの植物が咲き始めるので銘の選択肢はとても多いですね。
霞(かすみ)といえば春の季語ですが、夜になると朧(おぼろ)に呼び方が変わります。朧月夜なんて聞いただけで春らしくて非常に風情のある言葉ですね。
夜桜、朧、月は日本画の画題でもよくありますので、一本くらいは持っておきたい掛軸です。
そして、四月はいよいよ夏に向けて稲を植える準備をし、茶摘みシーズンの到来の季節でもあります。
4月の銘 旧暦四月の異名
陰暦四月の名前を挙げます。
- 卯月 うづき
- 卯の花月 うのはなづき
- 巳月 しげつ、みのつき
- 建巳月 けんしげつ
- 余月 よげつ、うづき
- 鳥待月 とりまちづき
- 陰月 いんげつ 陽が極まり陰を生じる月
- 乾月 けんげつ
- 鎮月 ちんげつ
- 花残月 はなのこりづき
- 清和月 せいわづき
- 夏端月 なつはづき 夏初月
- 夏半 かはん
- 初夏 しょか
- 孟夏 もうか
- 正陽 せいよう
- 仲呂 ちゅうろ
- 木の葉採月 このはとりづき
- 乏月 ぼうげつ
- 麦秋 ばくしゅう
- 祭月 まつりづき
陰暦では四月は夏の初めですが、現代ではまだ春ですので違和感のある4月の名前もあったりします。
卯月の名前にある”卯の花”が咲くのは本州の多くでは5月ですが、ヒメウツギはもう少し早く咲いたりします。
「祭月」というのは陰暦の四月に「賀茂の祭」、つまり「葵祭」が行われていたから、ということです。
今では葵祭と言えば5月のイメージが強いですので、とてもややこしい気がします。
【4月の銘】二十四節季 七十二候 雑節・行事
暦や行事は銘を付ける際にとても参考になります。
4月の暦と行事について少し詳しくなりましょう。
4月の二十四節季と七十二候
- 雷乃発声 かみなりすなわちこえをはっす 3月30日~4月3日頃
清明 せいめい 4月4~18日頃
- 玄鳥至 つばめきたる 4月 4日~8日頃
- 鴻雁北 こうがんかえる 4月 9日~13日頃
- 虹始見 にじはじめてあらわる 4月14日~18日頃
穀雨 こくう 4月19~5月4日頃
- 葭始生 あしはじめてしょうず 4月19日~24日頃
- 霜止出苗 しもやみてなえいずる 4月25日~29日頃
- 牡丹華 ぼたんはなさく 4月30日~5月4日頃
雑節・茶道で出てくる4月の行事・歳時記
灌仏会 かんぶつえ
4月8日に釈迦の生誕を祝う 降誕会、仏生会、花会式、花まつりなどともよばれる。
誕生仏に甘茶を灌ぐのは、八大竜王が甘露の雨を吐き釈迦の産湯を満たしたという故事によるものです。
お寺では美しく高雅なお祭という風情で、非常に雰囲気が良いです。
灌仏会の日の参拝は非常におすすめですので、ぜひ当日に行ってみてもらいたいです。
十三詣り じゅうさんまいり
数えで13歳になると「虚空蔵菩薩」へ参拝して知恵と福徳を授かる。
元々は京都を中心に陰暦3月13日におこなわれた。
春の土用
立夏までの約18日間が土用。
四頭茶会 建仁寺
栄西禅師の降誕会(4月20日)に行われている京都建仁寺の四頭茶礼。
鎌倉時代に栄西禅師が日本に伝えたとされる作法で行われます。
一度は体験しておきたい古式ゆかしい有名な茶会。
天目台と天目を使用するので高貴な身分を疑似体験できるかもしれません。
京都市の無形民俗文化財にもなっています。
炉の名残、炉塞ぎ
4月末の炉塞ぎは風炉の名残以上に寂しい感じがするのは私だけでしょうか。
5月からはいよいよ風炉の季節なので、気分も新たにさわやかな季節を迎えます。
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