炭手前は茶事では必須ですが、お稽古で学べる機会はあまり多くないのではと思います。
実際に炭を置くのを見たり、自分でやったりするチャンスが少ないと覚えるのにも苦労しますよね。
また、炭手前は棚のアリナシなどによって順序ややり方が違っていたりしますので、「稽古の度に違う事やっている気がするけど??」なんて思う方もいるかもしれません。
そこで、「風炉の炭手前の比較をして ”初炭手前” の順序を覚えやすくしよう」というのが今回のテーマです。
横並びで比較してみると、数種類の手前をかなり覚えやすくなると思いますのでおススメな覚え方です。
今回は風炉の初炭手前についてですので、炉の手前は↓です。
とはいえ、まずは運びの炭手前を経験してある程度覚えるまでは余計な知識になりかねませんので、「炭手前は全くワカラン!やったこともない!」という方はまずは運び(というか棚なし)の初炭手前で扱いなどの基本を覚えてください。
炭手前の道具の基本的な扱いについては下記の「炭道具の扱い」の記事を参考にしていただければと思います。
以下細かい事をいろいろと書いてますが、結局言いたいことはシンプルなので、「こんなに覚えられんわ、ムリ」という方は最後のまとめだけでも読んでみてください。
風炉の初炭手前の種類
風炉の炭手前にも色々とありますが主なものは
- 運び(棚なし)
- 棚
- 台子・長板総荘
あたりを覚えられれば基本は十分ではないかと思います。
初炭手前は他にも盆香合、炭所望、台目、中置、逆勝手、立礼、長板のその他の荘り、真之炭などなどたくさんありますが、ここではより基本的な↑の3つを押さえておきたいと思います。
基本の三つを押さえられれば、他の炭手前もその派生として解りやすくなるはずですし。
また、使う道具や場面によってもやり方、ルールなどが異なっていますので非常に複雑ですが、ココでは基本を押さえたいので
「土風炉の前欠風炉、小板」を使用し、「灰器を持って帰る前に釜の蓋を切る」という前提ですすめます。
初炭手前の手順(大きな構成を把握)
初炭手前の順序を大きな構成に分けると
- 準備(運び出し)
- 道具の展開
- 初掃
- 下火を直して炭をつぐ
- 中掃
- 月形を切る
- 後掃
- 香を焚いて拝見にだす
- 片付ける
という構成で出来ています。
これを把握していれば、とりあえず炭手前を無事に終えることだけは出来るはずです(笑)。
では段階ごとに比較します。
9段階もあるなら覚えられん!と思いがちですが、実際に違う点はわずかなので大丈夫です。
炭手前の準備と運び出し
- 道具の準備
- 炭斗を運び出す
- 灰器を運び出す
お点前を始める道具の準備をして、運び出しまでを行います。
風炉の炭を炭斗(すみとり)に組んで入れ、羽、鐶、火箸、香合、釜敷を炭斗に仕込みます。
※棚に羽・香合を荘るときには、羽・香合は炭斗に仕込みません。
※台子・長板総荘の時には火箸を杓立の中に入れますので、火箸は炭斗に仕込みません。
灰器と灰匙、藤灰を準備します。
参考までに、鬼面風炉や朝鮮風炉などのカネの風炉の場合には灰器を使用しませんので、灰器の準備は不要となります。
炭道具を”展開”して釜を上げる
炭道具の”展開パート”は棚なのか、運びなのか、などによって異なりますので、ココが重要なポイントになります。
この段階を覚えれば、炭手前の”順序”のほとんどは覚えたも同然かもしれません。
道具を置く”位置”については教本で確認するようにしてください。
運び(棚なし)
- 「羽」 を出す
- 「鐶」 を出す
- 「火箸」 を出す
- 「香合」 を出す
- 「釜の蓋」 を閉める
つまり「羽・鐶・箸・香合・釜の蓋」です。
呪文のように何度も唱えて覚えてしまうのがおススメです。
「はねかんばしこうごうかまのふた」でも「はかんばしこうごうかまのふた」でもどっちでも好きにしてください。
棚あり
- 「羽」 を置く
- 「香合」 を置く
- 「釜の蓋」 を閉める
「羽・香合・釜の蓋」と何度か唱えていれば覚えられます。ハイ簡単です。
鐶と火箸は展開しないというのが大きな特徴です。
棚があるぶん狭いですから、見た目にも覚えやすいと思います。
ちなみに、中置初炭は運びですがここの仲間です。
台子・長板
台子・長板の杓立に火箸が差してあるときのパターンです。
- 「羽」 を降ろす
- 「香合」 を降ろす
- 「火箸」 を炭斗へ
- 「釜の蓋」 を閉める
「羽・香合・火箸・釜の蓋」と何度か唱えて覚えれば任務完了です。やっぱり簡単です。
釜の蓋を閉じたあと
運びも、棚も、台子・長板も、釜の蓋を閉じましたら
- 鐶を掛け
- 釜敷を懐中から出し
- 釜を上げて定座へ引き鐶を外す
と、なります。
この部分は、「鐶掛け・釜敷・釜上げて」と何度も唱えて覚えてしまうのがおススメです。
初掃(しょばき)
羽箒での掃き方は炭手前での必修ポイントです。
出現率の高い”土風炉の前欠風炉”の場合の順序だけは覚えましょう。
風炉はその他にも沢山ありますが、形によって掃き方が異なりますので、詳しくは教本で確認してください。
下火を直して炭をつぐ
- 下火を1本向こうへ移動して
- 胴炭から順に炭を置いていく
- 火箸を炭斗へ戻す
火箸は畳に突いて持ち替えをするのが基本ですが、飾火箸は畳に着かず手で持ち替えをします。
中掃
羽箒で中掃をします。
中掃を終えたら、畳の上に羽箒を置きます。
月形を切る
灰器を持って風炉正面へ向いて、月形を切ります。
後掃
月形を切ったら、後掃をします。
火窓を3回で掃くのが特徴です。
後掃が終われば、羽は炭斗の上に戻すのがポイントです。
香を焚いて拝見に出す
香合を取って、蓋を開け右膝頭に置きます。
(炭手前の際、開けた香合の蓋はほとんどの炭手前で右膝頭あたりに来る、と覚えておくと便利です。)
火箸で香を焚き、香合の蓋を閉めたら、香合の拝見を請われます。
受けて、客付きへ回り香合を拝見に出します。
片付ける
「運び」と「棚」は一緒で、杓立を使っている台子・長板は違うポイントがあります。
運びと棚の場合
- 鐶を取って釜を風炉に掛ける
- 釜敷を仕舞う
- 釜の調整、鐶を炭斗へ入れ下がる
- 釜の蓋を清める
- 釜の蓋を切る
- 灰器、炭斗を水屋へ持っていく
香合を出した後に何をするのか忘れがちですが、あとは片付けるだけです。
鐶をスグに取って、釜に掛け、釜敷仕舞って、鐶を外して、炭斗に入れたら下がります。
羽で釜の蓋を清めて、帛紗で釜の蓋を切って、灰器片付け、炭斗片付けて水屋で待ちます。
つまり持って帰る片付けているだけですね。
香合の拝見が終われば、香合を取りに出て、香合の問答をして終了となります。
台子・長板の場合
- 鐶を取って釜を風炉に掛ける
- 釜敷を仕舞う
- 釜の調整、鐶を炭斗へ入れ下がる
- 釜の蓋を清める
- 火箸清めて杓立へ
- 釜の蓋を切る
- 灰器、炭斗を水屋へ
釜の蓋を羽で清めた後が違うパターンになります。
つまり、火箸を清める所作があります。
釜の蓋を清めて羽を炭斗へ置いたら、火箸を取って、左手に渡す。
右手で羽を持って箸先を羽で清めます。
清めた火箸は杓立へ戻します。
帛紗を捌いて、釜の蓋を切ります。(男性は素手)
あとは他の手前と同じように灰器、炭斗を水屋へもっていき、香合を取りに出て問答をしたら終了です。
風炉の初炭手前【まとめ】これだけ覚えて
最後に今回のまとめです。
風炉の炭手前(運び・棚・台子長板)をまとめると特に強調しておきたい点は2つです。
・1つ目は
運びの初炭手前は
「羽・鐶・箸・香合・釜の蓋・鐶掛け・釜敷・釜上げて・初掃して・下火直して・炭ついで・中掃して・月形切って・後掃して・香焚いて・拝見出して・片付ける」
となっています。とりあえずコレを呪文のように唱えて覚えたら、違うパターンになる箇所を把握します。
「鐶掛け・釜敷…」以降はほぼ同じですので、手前の種類によって変わるポイントは
「羽・鐶・箸・香合・釜の蓋」
の部分です。
この部分を【運び・棚・台子長板】に分けて3種類覚えましょう、ということです。
・2つ目は
「台子・長板」の場合、片付けの途中「釜の蓋を羽で清めたら “火箸も清めて杓立へ戻す”」という所作があるのを覚えましょう、ということです。
異なるポイントを理解すれば、後はほぼ基本通りですので、覚える箇所が少なくて応用も効くかなと思います。
また、風炉を覚えると炉のときにも非常に役に立ちます。つまり炉で覚えることを少なくすることが出来ます。
この記事がいろいろな炭手前を覚える時の参考になれば嬉しいです。
以上、【初炭】手前(風炉)覚え方 「運び・棚・台子」を比較していっぺんに覚える という話でした。