色絵の茶碗や水指で仁清写(にんせいうつし)ってよく見ますね。
仁清写は「野々村仁清が作った物を真似したもの」という意味です。
今回は「仁清写」という茶道具においてよく見かける用語を詳しく解説します。
「写」って何?
「写」(うつし)というのは簡単に言えば
ソックリに真似したもの
って意味で、当たり前ですが贋物とは区別されます。
写はニセモノとは違うのか
仁清写ならば、仁清をソックリに真似したもの。
高麗写ならば高麗茶碗をソックリ真似したもの。
印を押すときなんかには自分の印を押したりするので、贋物(ニセモノ)とは明らかに異なりますよね。
なので、「写? あぁニセモノのことね?」
とか言わないでください。
恥かきます。。。(たまにそんなこと言っているひと見るので)
「正確にそっくりそのまま」 なのか
「写」が、そっくりに写しているものという事であれば
「仁清写茶碗は仁清の写しって意味だから、仁清の作った物を正確にそのまま真似(絵柄、構図、色、形、サイズなど)した茶碗ってことじゃない?」
というイメージを持っているかた多いんじゃないかなと思います。
実は、これはそうでない事の方が圧倒的に多いです。
「写」と言ってもたいていはソックリそのままではありません。
仁清写といえばどのようなイメージをされるかは人によって色々だと思いますが、多くの方は色絵をイメージするのではないでしょうか。
色絵の仁清写に関して言うと、茶道具を作っているとある有名な作家さんは
「仁清風の形の素地を使って、仁清風の絵を書いて、上絵付をしたものは仁清写としている」
と言っていました(書いてました)。
つまり、題材や構図、形、絵柄は自分の創作ってことですね。
なので、「仁清の茶碗にこんな図柄のは無いよね?」
という様な事が良くあります(笑)。
色絵茶碗で、内側も外側も絵を描いて総柄でものすごく豪華な茶碗があったりしますが、そういうものは仁清が作ったものには無いという事を聞きます。
もちろん作家さんによっては形も柄も釉薬もソックリに作ってある物があったりしますが、そうでない物の方がはるかに沢山あります。
なんなら、碗形で上絵付をしているものなら仁清写っていう認識の方がむしろ合ってるのかもしれません(笑)。
そんなユルイ感じなので、「仁清写」と箱に書いてあっったとしても、どういう意味での写なのかには注意が必要です。
美術館で本物の仁清をよく観察して、仁清とはどういう作行きのものがあるのか、自分でよく確認しておくのが大事だと思います。
なぜこんなに仁清がメジャーなのか
なぜ昔から仁清が尊ばれるのかというと、それまで日本で作られていた物とは違って
純日本風なものを創作していったからだそうです。
仁清以前の物というのは基本的に唐物や高麗物の模倣でしたので、新しい日本風な物を作ったのが野々村仁清というわけです。
今ではお茶の中ですっかり当たり前で、日本の伝統的な物だと思っていた物も仁清から始まったものがあるんですね。
新しい物を伝統にしてしまうというのは、まさに天才ですね。
仁清が作ったのは色絵だけではない
仁清と言えば、色絵の飾り茶壺が国宝になっていますので、ご存じの方も多いと思います。
ですが、ああいったハデ目なものばかり作っていたわけでは無いのです。
仁清という人物についてはいろんなところで解説されますのでここでは触れませんが、仁清は染付、青磁以外なら、かなり多くのタイプの陶器を作っている多芸の人です。
ですので
- 高麗写(こうらいうつし)
- 唐物写(からものうつし)
なんかもやっています。
これは”仁清が”写したものってことですね。
「仁清写」(仁清を写したもの)と「仁清が写したもの」では意味が全然違ってしまうので注意してください。
ということで、仁清は今日多くの方がイメージする華やかな色絵の物だけを作っていたわけではありません。
高麗茶碗の写あたりは、ヒジョーにうまいです。本歌になっちゃってる物も多いと聞きますよ。
仁清写のいろいろ
「仁清写」について、という本題に戻ると、瀬戸、高取、信楽風でも仁清写というのがあります。
仁清が作った物を、瀬戸やら高取やら信楽で真似したものということですね。
なので器形での仁清写という事もあるわけです。
細長い茶入でシュッとした形の物は仁清の形だなと思いますし、水指の口造が細かい輪花になっている物とか、独特の形も多いです。
仁清は錆絵(さびえ)なんかもやってますので、錆絵の仁清写なんかもあります。
色絵以外に「どういったものが仁清の形なのだろうか?」と考えながら美術館に行くとかなり勉強になりますよ。
美術館の解説にも書いてあったりするので、読みながら観察してみてください。
野々村仁清は江戸初期の人
色絵の茶碗を見てるとそんな気がしないですが、意外なことに仁清はけっこう昔の人です。
生没年はよくわからないようですが、1596年生まれじゃないか、と推定しているものがあるという事ですので、江戸時代になる少し前くらいの生まれですね。
活躍したのは1600年代の半ばあたりですので350年くらい経っているんです。
「そんなに前の人なの?!」
って言われたことあるんで、現代においても古さを感じさせない凄みがあるんだと思います。
茶陶といえばやっぱり桃山期に注目が集まりますので、そのすぐ後の時代に出てきて新たな伝統となるような作品を作るというのはホントすごいです。
やっぱり、単なるフォロワーでは伝統となりうる力はないってことですかね。
野々村仁清おそるべし です。
仁清写まとめ
ということで仁清写とは
- 野々村仁清が作った物を真似した作品の事
- 仁清写は色絵だけに限らない
でした。
「写」は真似した物と言っても、色々な意味がありますね。
以上 仁清写とは何? 茶道具でよく見る用語 という話しでした。
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