茶道のお稽古で茶杓や茶入、茶碗の銘に困ることがあると思います。
どんな銘をつければ良いかわからない方は参考にしていただけると嬉しいです。
ちなみに、日本では1873年(明治6年)から新暦になり、旧暦との差が1か月以上あったりもします。
ここでは新旧暦ひっくるめて1月によく使われる銘を挙げます。
季節の銘ではなく無季のカタい銘が知りたい方は禅語や漢詩関連の銘の記事をどうぞ。
1月に茶道で使用される銘一覧
- 翁 長寿を寿ぐ
- 戎 恵比寿様
- 蓬莱 蓬莱山のこと 仙人の住むところで不老不死のイメージ
- 千歳 長い年月のこと 縁起の良い言葉
- 御降 おさがり 元日や三が日の間に降る雪や雨のこと
- 宝船 初夢でみると幸運の定番
- 丹頂 丹頂鶴のこと ”鶴は千年”の長久のイメージ
- 若水 元旦の朝に初めて汲む水
- 老松 長い年月の繁栄を表す
- 神楽 神事に関連して
- 高砂 能の演目 長寿、繁栄を寿ぐ 夫婦円満
- 若菜 7日に若菜を摘み七草粥を食べる行事がある
- 大福 村上天皇が正月にお茶を服されたことから(王服茶、皇服茶)
- 初霞 新春の野山にたなびく霞
- 万歳 長い年月 正月の門付け芸の一つ 太夫と才蔵の万歳
- 千秋万歳 せんしゅうばんぜい 永遠、永久 せんしゅうばんざい
- 萬々歳 万歳の強調した表現 これ以上なくめでたい感じ
- 初音 ウグイスがその年はじめて鳴く声
- 春駒 正月の門付け芸の一つ 馬の頭の形の玩具
- 緑毛 りょくもう 亀に藻がついた様子 長寿の象徴
- 初鶏 はつとり 元旦の朝に東天紅を告げる鶏
- 初鴉 はつがらす 元日に鳴く鴉 金烏 太陽の象徴
- 常盤 いつまでも変わらない岩やその様子 とこいわ
- 常盤草 ときわぐさ 松の異名
- 千代木 ちよき 松の異名
- 久木草 ひさきぐさ 松の異名
- 十八公 じゅうはっこう 松の異名
- 五大夫 ごたいふ 松の異名
- 福の神 七福神など、福をもたらす神
- 懸想文 正月に懸想文売りが売り歩いたお札
- 嫁が君 正月三が日の間にネズミの忌み言葉
- 不老門 不老長寿を願い置かれた門
- 三番叟 五穀豊穣を祈り感謝をささげる狂言方が行う神事の舞 (三番三)
- 長熨斗 長く伸ばした熨斗アワビ 祝儀に添える
- 破魔弓 魔除け厄除け 射礼に由来するといわれる
- 突羽根 正月にする羽根つきに使用する
- 青海波 平穏、平和が長く続く様子を表す
- 不老仙 いつまでも続く悠久のさま
- 四海波 波がおさまり、国家の平和を寿ぐ
- さざれ石 細かい石が長い年月をかけて大きな岩になったといわれる
- ゆずり葉 新葉が出てから古い葉が落ちることで繁栄の象徴
一月には新年を寿ぎとにかくおめでたい銘が並びます。
一月の銘の特徴としては、鶴や亀などに代表される”長く続くさま”を表現した、繁栄を表す言葉が多いと思います。
ながーい歴史とか、ずーっと続くとか、ご長寿というのは目出たいということですね。
また、正月に毎年行われる定番の行事に関連した銘もありますので、行事関係も下で勉強していきましょう。
1月の銘 旧暦正月の異名
陰暦(旧暦)の一月の異名を紹介します。
一月を違う呼び方で表現することによって銘にすることもできます。
新暦で1月になっても、旧暦ではまだ12月の場合がほとんどですが、そこはあまり気にしないで良いかもしれません。
ほとんどの現代の日本人は旧正月で正月を祝ったりしませんので。
- 睦月 むつき
- 元月 がんげつ
- 太郎月 たろうづき
- 端月 たんげつ
- 寅月 いんげつ、とらのつき
- 建寅月 けんいんげつ
- 子日月 ねのひづき
- 年端月 としはづき
- 初月 しょげつ
- 初春月 はつはるづき
- 初空月 はつそらづき
- 初花月 はつはなづき
- 初見月 はつみづき
- 早緑月 さみどりづき
- 霞初月 かすみそめづき
- 暮新月 くれしづき
- 太簇・大簇 たいそう
- 孟春 もうしゅん
などなど、調べればきりがないほどに月の異名が存在します。
ちょっとひねった風流な一月の異称を調べてみるのも面白いかもしれません。
1月の銘 二十四節季 七十二候
1月にある二十四節季、七十二候などの暦をみていきます。
銘をつけるときにも暦は役立ちますし、二十四節季などをそのまま銘にするのもアリです。
1月に来る二十四節季は
- 冬至 とうじ
- 小寒 しょうかん
- 大寒 だいかん
二十四節季の中に七十二候が三つずつ入っています
毎年来る暦は覚えておくと、銘を考えるときにとても役に立ちます。
冬至 とうじ
冬至は年明け前のイメージですが、冬至の末候「 雪下出麦 」が年明け後に訪れるので挙げます。
- 乃東生(なつかれくさしょうず) 12月22日~26日頃
- 麋角解(さわしかのつのおつる) 12月27日~31日頃
- 雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる) 1月1日~1月4日頃
小寒 しょうかん
- 芹乃栄 せりすなわちさかう 1月6日 ~10日頃
- 水泉動 みずあたたかをふくむ 1月11日~15日頃
- 雉始雊 きじはじめてなく 1月16日~19日頃
大寒 だいかん
- 款冬華 ふきのはなさく 1月20日~24日頃
- 水沢腹堅 さわみずこおりつめる 1月25日~29日頃
- 鶏始乳 にわとりはじめてとやにつく 1月30日~2月3日頃
雑節や茶道で出てくる1月の行事
1月に毎年やってくる行事について少し知っておくと、銘を付けるときのイメージをしやすいと思います。
お茶の世界でよく出てくるイベントを少し勉強していきます。
人日
1月7日 中国から伝わる「人」の日の節句 若菜摘みの行事
十日戎
1月9日~11日 商売の神様の恵比須様のお祭り
小正月
1月15日 どんど焼き、左義長が行われる
前年のお札や正月飾りなどを焼く火祭り
近くの町内会などでもやっているかもしれませんので一度は体験してみると良いかも
初釜 はつがま
新年を祝い正月に初めて掛ける釜(初会、点初め、茶湯始、初茶会)
表千家の家元では「少庵召出し状」、元伯「春入千林処々鶯」、裏千家では正親町天皇御宸翰、武者小路では一翁の「茶道有無雪塵」が掛かるのが定番
自分が習っている流派でない所での家元の初釜に行ってみたりすると、非常に新鮮です
初子の日
正月最初の子の日 平安時代には小松引きの行事があった
書初 かきぞめ
正月二日の朝に書く (試筆、吉書)
鷽替え うそかえ
菅原道真を祀る神社で行っていることが多い神事
太宰府天満宮では1月7日
菅原道真に縁の深い鳥の鷽(うそ)をかたどった木像を神社で交換してもらうことで幸運を願う
甲子釜
一月中に”きのえね”の日があると初甲子として釜をかける
一月の銘をつけるときには、そういえばこんな行事があるなとイメージすると少しは銘を付けやすいかもしれません。
実際に寺社などで行事に参加すると、イメージしやすくなると思います。
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