茶道では道具がかなり重要な位置を占めていますが、専門的な用語が多くてなかなかわかりづらいですね。
中でもよく耳にするのは「箱書」(はこがき)だと思います。
今回は箱書についての基本的な事項を解説します。
箱書(はこがき)を知ると茶道具がわかる
茶道具が入った箱に、筆で書いてあるものを箱書付(はこかきつけ)と言います。略して箱書。
墨書だけでなく、漆書きされたものもあります。とにかく箱に書いてあるもの。これが箱書。
かんたんに言えば、それだけなんですが「箱書」という言葉の使い方にはすこし注意が必要です。
文字通り箱に書いてあるのはぜんぶ箱書になります。
が!
その茶碗なり水指なりを作った人が書いている箱書もあれば、持ち主が書いている箱書もあったり、どこかの流派の宗匠が書いていたりする箱書もあります。
書いている人は大きく分けて
- 作者
- 宗匠
- 有名茶人
- 所有者
というのがありますが
一般的に「箱書きがある」といわれるものは、どこかの流派の宗匠か有名茶人が書いている物を指します。
どこの誰とも良くわからない所有者や、作者が書いたものは「箱書がある」と表現することはあまりありません。
【箱書】共箱(ともばこ)
現代に作られている茶道具は基本的に作家がいますので、その作家本人が箱に書付をしているのが普通です。
これを共箱と言います。
たとえば
「仁清写武蔵野茶碗 誰某誰兵衛 印」(ホントは縦書き)
のような感じで、筆で書いたあとに印を押すというのが、基本のパターンです。
では、この共箱を箱書と言うのか?というと、あまり言いません。
広い意味では箱書で間違いないのですが、上にも書いたようにいわゆる箱書と言った時には
- どこかの流派の宗匠
- 有名茶人、大名、家老、茶堂などなど
が、書いている物。という場合の方が圧倒的に多いです。
ですので、作家本人の箱書があるときには「共箱がある」という言い方になります。
【箱書】極(きわめ)
ちなみに作家本人の箱が無くて(あっても良いですが)、例えばその作家の子孫が
「これは間違いなく”先祖のだれそれ”の作ったものですよ」
という意味の箱書をしていることがあります。
こういった、今でいう鑑定書のような物を「極」(きわめ)と言います。
極についても、 ”箱書がある” とはあまり言わず、「極がある」という言い方になります。
ちなみに、極は箱に書かれるものだけではなく、札やそのほかの物に書かれているものがあります。
【箱書】割書き
箱書の仕方に割書き(わりがき)という物があります。
割書きは
- 箱の蓋裏に書付をする
- 道具の方に漆で花押を直書きする
この1と2がセットになって一つの書付というスタイルです。
棗で良く見られるパターンですね。表千家さんでは水指でもほぼこのパターンです。
逆に言えば、割書きができるものを割書きしていない道具は少し値段が下がります。
箱書という言葉の使い方
以前耳にした会話で
「こちらの茶碗はすごく良い茶碗ですね、どなたかのお箱書があるんですか?」
というのに対して
「はい、あります。茶碗を作った作家さんが箱に書いてます」
なんて、答えている人かたがいました。
間違ってはいないんですが、これはどうやら互いの意図が通じてません。
質問者は「どこかの宗匠や有名茶人の書付があるのですか?」という意味で尋ねたのですが、
回答者はイエスと言いつつ、実態はノーだったということです。
こういう事はわりとあります。
箱書といったときには ”基本的には共箱の事は指していない” と頭に入れておいた方が良いでしょう。
茶道具の箱書を扱うときの注意点
箱書についてはとても大事な注意点があります。
ゼッタイに守らなくてはならないこともあります。
箱書には触らない
茶会などで並べて飾ってある箱書(ふつうは箱の蓋)は許可を得ない限り触らないようにしてください。
どエラく怒られる可能性があります。マジです。
キチンとしたお茶の先生は「箱に触る際には手を洗ってから」と教えますので、基本的に触らない方が無難でしょう。
ベタベタ触る人は茶道具をわかっていないか、ムチャクチャ慣れているひとのどっちかですね。
書付部分にはゼッタイ触れない
箱や箱の蓋を手に取って触れても良いですよと言われても、ぜったいに触ってはいけない場所があります。
それは書付(かきつけ)部分です。
つまり ”筆でかいてあるところ” のことです。
たまに書付の上を撫でるように触る人がいますが、ゼッタイやってはいけません。
完全にアウトです。
平気で書付に触る人がいると、道具を出している茶会の亭主は
「道具の次第を飾るのは危なっかしいのでやめよう」
と思ってしまいます。
茶道具には中身と同じように箱も非常に大切にされ、何百年も伝えられてきているものがあります。
箱は洗う事ができませんし、すでに亡くなった茶人に再度書いてもらうわけにもいきません。
なにか粗相があると大変な事態になりかねないので、むやみに触るのはやめましょう。
【箱書】茶道具のまとめ
今回の話しをまとめると箱書は
- 流派の宗匠か、有名茶人が書いているものを言う場合が多い
- むやみに触らない
ということでした。
箱書はいろんな書き方やタイプがありますので、よくみると意外と面白いです。
誰が書いているのか知るために、花押を覚えてみるのはおススメです。
また、箱にも色んなタイプがあります。箱や紐などを気をつけて見ると、
「良い物が入っていそうだ」とか、
「この箱はダメそうだわ。。」とか読み取ることができて面白いですよ。
手に取らなくても充分いろんなことを知ることができるので、ぜひ箱書をジィ~っと見てみてください。
ということで以上、茶道具の箱書についてのいろは という話題でした。
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