茶道の茶席などで掛かる軸について基本的な事を勉強します。
今回は掛軸の表具(表装)の真行草(しんぎょうそう)の見分け方です。
真行草の特徴を全部おぼえるのは大変なので、見分け方から入って特徴をイメージできると解りやすいと思います。
それと
「真行草がわかると何が良いの?わかるメリットあるの?」という話し。
表具を2か所見ればわかる 判別の仕方
表具の真行草の形式を判断するには2ステップ
- 柱を見る
- 一文字を見る
柱をみれば、大きいカテゴリーの真行草が判断できますので、まずは柱をみます。
一文字を見れば、小さいカテゴリーの真行草の判断をすることができます。
ハイ、これだけ。簡単です。
というわけで、大和表装であれば2か所見るだけで8つある真・行・草の形式が判断できます。
ですが。
コレだけだとよくわからないと思うので、続きに詳しく書きます。
まず基本を押さえておかないと判断できないですからね。基本的なことからいきましょう。
大和表装の真行草
日本にある掛け軸の多くは大和表具といわれる形の表具です。(他に文人表具などがありますが、ここでは解説しません)
表装の形式で大きく三つに分かれています。
- 真:裱褙(ひょうほえ)
- 行:幢褙(どうほえ)
- 草:輪褙(りんほえ)
という感じです。(読み方は他にもいろいろあります)。
真と行には、それぞれまた「真行草」がありますが、草には「真」がありません。
「なんのこっちゃ?」という感じですが、つまりは ↓ のようになります。
- 真の真、真の行、真の草
- 行の真、行の行、行の草
- 草の行、草の草
※草の真はないのです
大きいカテゴリーの「真・行・草」に、小さいカテゴリーの「真・行・草」があるということで、
合計8種類の形式がありますよって事です。
茶席で掛かる軸はほとんど「草」のカテゴリー
茶席で出てくる表装の形式は、ほとんどが「草」の格です。
掛け軸にはいわゆる「茶掛け」といわれる物がありますが、これは大和表具の「草」の形式に当てはまります。
大きいカテゴリー「草」の中の小さいカテゴリー「行」なのか、「草」なのかをさらに判断する必要がありますが、
茶席で登場する軸はほとんどの場合、大きいカテゴリーは「草」の形式という事を覚えておくと良いと思います。
【真行草】表具の格のカンタンな見分け方
見分け方ですが、画像が無いと表具のイメージがつかないと思いますので、上の手描きのしょーもない図(笑)で良ければ見てください。ダメか…。
ヘタすぎてワカラン!という人は大和表装(リンク)を図解したサイトも見ながら読んでください。
見分けるには初めに書いた通り、2工程です
- 柱を見て大きいカテゴリーの判断
- 一文字を見て小さいカテゴリーの判断
詳しく見ていきます。
掛軸の柱ですぐわかる
表具の「柱」を見ることによって、まず最初の大きいくくりの「真行草」のどれにあてはまるのかが判別できます。
柱の確認するポイントは2つで
- 柱の太さ(横巾)
- 柱は何でできているか
という点をみれば、大きいくくりの真行草がわかります。
- 柱が太い→「真」か「行」
- 柱が細い→「草」
柱が太くて「真」か「行」だと思ったら、その柱の太い部分は何の裂で出来ているかを見ます。
- 天地と同じ裂でできている →「真」
- 中廻しと同じ裂でできている→「行」
ということで、柱を見るだけで大きいカテゴリーの真行草を判断することができます。
「っていうか”柱”って何?」という人は「掛け軸の名称(リンク)」の参考にしてください。
「柱」は本紙の横のタテに長い部分のことです。
掛軸の一文字を見る
次は小さいカテゴリーの真行草の判別です。
一文字を見ることで、小カテゴリーの真行草を判別できます。
- 一文字廻しになっている→「真」
- 一文字になっている →「行」
- 一文字が無い →「草」
これはシンプルですね、裂が廻っているってのは格が高いってことです。
手間がかかっているモノは格が高い!
ちなみに一文字は表装の中で一番上等な裂地を使うのが普通です。
一文字部分に金襴を使っているのをよく見ると思いますが、金が入ってるので「上等そうだな」ってイメージできると思います。
さぁ、これで大和表装の掛軸の形式の判断ができました。
表装の真行草の特徴
真行草にはそれぞれ特徴がありますので、その話を。
ナゼ、真行草に分かれているのかが、たぶんわかります。
たぶん。。。
真(裱褙)
「真」の表具の特徴は天地の裂が回って(総縁)います。
「行」や「草」の表具には天地の部分を廻して総縁になっているものはありません。
また、筋と呼ばれる細~い裂が中廻しの内外にあるのが真の表具の特徴です。要するに贅沢な作り。
手間もお金もかけてます!という感じです。
ちなみに茶席でこの真の格の表具が出てくることはほとんどありません。
なぜかというと、神聖表具とか本尊表具とか言われて、格がものすごく高い表具だから。
おいそれと出てくるような物じゃないってことです。
行(幢褙)
いちばん幅広く使われている表具の形です。とはいえ茶席ではそんなに出てきません。
「行」の表具は上下が廻っていないもので、中廻しの柱の部分が太いものです。
草(輪褙)の表具と比べて観れば一目瞭然です。
一瞬でわかるくらい「行」と「草」の中廻しの柱の巾(はば)は違っています。
見慣れれば直ぐに「行」の形式なのか、「草」の形式なのか、判るようになると思います。
ちなみに、一番古い禅僧の掛軸と言われる国宝の「流れ圜悟」でも「行の行」の形式です。
草(輪褙)
「草」の表具は柱がものすごく細いです。五分(1.5㎝)以下と決まっているのでスグにわかります。
草の形式ですが、これが茶席で掛かっているのを観る機会が一番あると思います。
現在茶席で観る掛軸の多くは、一行書と呼ばれる形で大徳寺の僧や、お茶の宗匠が書いたものですよね。
これらの掛軸の多くは草の形式になっています。
気軽な感じと言ったら書いた人に失礼かもしれませんが、上の格と比べるとどうしても軽くなりますね。
でもお茶ではそれが逆に良い!ということになるんですが。。
大徳寺表具 紙で作られている
ちなみに大徳寺表具という物がありまして、明治期くらいまでの大徳寺のお坊さんの多くはこの表具だったりします。
大徳寺表具は天地と中廻しが紙でできています。
そして、風帯は白い唐紙で押風帯(おしふうたい)、一文字は竹屋町裂です。
大徳寺表具というのは輪褙に仕立てるので、格としては当然「草」ということになります。
という感じで見てきてわかる通り、世間の多くのお茶の先生がなぜかよくおっしゃる「一行書は一番格が高い」というのは真っ赤なウソです。
一番格が高いのであれば、草の表具をしますか?しかも竪物の軸ですよ?どう思いますか?
茶道はどっから始まったのかよくわからない都市伝説的なモノが多いですからね、気を付けましょう。
掛軸の表装の判別まとめ&判ると何が良い?
そんなわけで、真行草の形式の判別には
- 柱を見て”大きいカテゴリー”の判断
- 一文字を見て”小さいカテゴリー”の判断
ということでした。
茶席で掛かっている軸はどんな形式の物なのかじっくり見てみる事をお勧めします。
で、掛け軸の形式がわかってくると、何が良いの?って話しですが
「格の高いってのは何なんだ?」というのが何となくわかります。
「何となくかよ!?」って言わないでください(笑)。格ってのは難しいです。
昔の人はどんな物(本紙)を格の高いものとしたのか、がなんとなく見えてきます。
なので ”昔のちゃんとした軸じゃないと見てもあんまり意味無いかも…” ってところではありますけど。
そうすると、つい最近表装された軸などを見て、
この本紙になぜ「真」の表具なの?違和感あるな。。とかってことも思ったりするわけです。
シンプルに言えば、「掛け軸に詳しくなる」ってことですね。
なぜお茶の宗匠方の表具は草の形式が多いのかとか、なぜ紙表具なんだ?とか疑問が出てくると面白いのではないかと思います。
そんなことを通じてだんだんと軸の事について詳しくなっていくと思います。
ということで、以上 掛軸、表具の真行草の見分けかた という話題でした。
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