四ヶ伝は口伝の点前ですので、覚えるまでにはかなりの時間がかかります。
伝物の点前を毎回稽古場で教えてもらえる、という方はあまりいないですよね。
四ヶ伝を覚えるには
- 四ヶ伝に共通する特徴
- 道具ごとの扱いの特徴
- 他の点前と違う点
という事を意識すると、頭の整理ができてわりとスッキリ覚えることができます。
ま、それでも難しいのですけど。
四ヶ伝の許状をもらうのと同時期に習える「和巾」を合わせれば5種類ですし、炉・風炉の点前がありますので、この段階では10種類の点前を覚えるということになります。
これだけ多くなると
「この所作は唐物だったか?盆点だったか??炉それとも風炉?」
なんてことが誰にでもおこります。
四ヶ伝は習う頻度もそれほど多くないですし、先生によっては
「あれ?前回と教えてもらったことが違う気がするんだけど?」
なんてことも起こったりして(笑)
「口伝ややこし過ぎる!」と感じる人もいると思います。
ここでは四ヶ伝の特徴をざっくり書いて、どんな点前なのかを書いています。
細かい手順や道具の解説については書いていませんが、基本のキとなる知識は意外と大事です。
「そうはならんだろ!?」とツッコみたくなるようなことは、基本を知っていればじゅうぶん防げるものです。
点前の考え方、道具の解説、手順、点前のポイント、などの細かいことを知りたい場合はnoteの有料記事をご覧ください。
かなり情報量はあると思います。
奥伝についての解説もあります。
四ヶ伝(しかでん)の種類・特徴
四ヶ伝は4つの点前ですが、四ヶ伝と同じタイミングで許状をもらう「和巾」(四ヶ伝ではない)があるので、実際に勉強していくのは5つの点前です。
- 茶通箱
- 唐物
- 台天目
- 盆点
- 和巾点
四ヶ伝のお点前を覚えるときには、それぞれの特徴がわかるとイメージしやすいですよね。
実は四ヶ伝で習う点前は次の段階で習う”奥伝の割り稽古”的な側面があります。
この段階で道具の扱いを覚えておかないと、奥伝を習ったときに非常に苦労してしまいますので、順番はともかく道具の扱いだけはシッカリ覚えておくことが大切です。
四ヶ伝に共通する特徴 四ヶ伝の道具は超大事
四ヶ伝を習うと、初めて出てくる事がたくさんあります。
唐物を使う四ヶ伝に共通の特徴
- 道具が超大事!という所作
- 鐶付に置く
- 右手・左手に時間差をつける
- 省略しない
- 行に手をつく
- 菓子は三種
ものすごく大事な(由緒や伝来・産地によって)茶道具を扱うお点前が四ヶ伝ですので、 ”ムチャクチャ道具を大事にしていますよ”というメッセージ性のある所作がいろんなところに出てきます。
名物レベルの道具を扱うときには知っておかなければならないことなどがたくさんあるのです。
とはいえ、小習のときまでの道具はどうでも良いという事ではもちろん無いです。
茶通箱の点前に関しては、基本的に道具の扱いはこれまで通りです。
鐶付に置く
四ヶ伝では「鐶付(かんつき)」という言葉がかなり出てきますので
「鐶付に置く道具というのは何なのか?」
という事を勉強する機会になります。
唐物は鐶付に置く!というのをとりあえず覚えることが大事です。
小習で習った盆香合と照らし合わせて考えると良いかもしれません。
四ヶ伝の稽古に入ったら茶道具の勉強をしたほうが、物のイメージがしやすくなって点前も覚えやすくなると思います。
名物茶入の伝来などをいくつか読んで覚えておくと、問答のときにも重宝します。
有名な茶入の親しみやすい解説が載っているのでこの本はおススメです。
右手・左手に時間差をつける
四ヶ伝では右手、左手を時間差をつけて唐物道具や箱を持ちます。
- 茶入は 「右手・左手」
- 天目台は 「左手・右手」
という様な具合です。
奥伝でも共通する道具の扱いですので、四ヶ伝でしっかり覚えておかないと奥伝ではかなり苦労することになります。
「そんなものは四ヶ伝で覚えておくものだ!」と先生に叱られるパターンは、だいたいこの扱いの部分です。
基本はやっぱり大事ですね。
省略をしない
唐物道具を使用する四ヶ伝のお点前ではあまり省略をしません。
完全にしないわけではありませんが。
- 茶入の清め
- 茶杓の清め
- 茶筅通し
- 拝見物を出すときの位置(炉)
などにそれが表れています。
省略をしないということは格式の高さを表しているということにもつながります。
四ヶ伝は小習に比べると、格が高いお点前となっています。
行に手をつく
四ヶ伝では「行に手を着いて行う所作」がたくさんあります。
- 襖の開け閉め
- 道具を拝見に出すとき
- 客が道具を扱う時
行に手をつくというのは、割り稽古で習ったお辞儀の真行草の「行」ということです。
菓子は複数
小習までは菓子は1種のみでしたが、四ヶ伝は菓子は3種用意するということになっています。
3種のうち水菓子を1種入れます。
水菓子というのは果物のことです。
水ようかんやゼリーなどの水分タップリのお菓子じゃないの?!と思いがちですが、そうではありません。
茶通箱のお菓子は通常通りです。
余談ですが、「菓子の絵」と古い茶会記にあるときにはフルーツの絵のことです。
茶通箱(さつうばこ) 特徴
「茶通箱」の点前は茶通箱を使用して、濃茶を1碗で2服点てるお点前です。
到来物の濃茶を使うときなどに、この点前をすることがあります。
茶通箱の点前のポイントは
- 茶通箱の種類・扱い
- 濃茶を二服点てる
- 濃茶二服点の点前の共通点の勉強
- 客がタイミングをはかる勉強
茶通箱という初めて出てくる道具があるので、まずは箱の名称から覚えます。
茶通箱で覚えなさいと言われる茶通箱の種類は3つです。
- 利休好(りきゅうごのみ) 薬籠蓋(やろうぶた)
- 仙叟好(せんそうごのみ) 桟蓋(さんぶた)
- 玄々斎好(げんげんさいごのみ) 出合桟蓋(であいさんぶた)
これらは箱の蓋の形状が違っています。
実は他にも茶通箱はいろんな好み物がありますが、覚えなさいとは言われません。
メジャーな3つの茶通箱を覚えておくだけで十分です。
茶通箱の扱いに関しては、なぜ茶通箱はこのように扱うのかを考えると気づくことがありますので、点前の順序を覚えたら「なぜこうなっているのか」考えるのがおススメです。
茶通箱は濃茶を2服点てる点前ですが、実は濃茶を2服点てる点前は小習でも習っています。
それらの点前と茶通箱の共通点を知ることは、その後の奥伝の点前を覚えるヒントにもなります。
茶通箱の覚え方的には、「最初の濃茶を”詰め”が吸い切るまでは普通の濃茶の点前」と思っておくと気が楽になります。
次に、客がタイミングをはかる勉強というのは
- 二服目の所望のタイミング
- 茶碗を返すタイミング
- 二服目の問答のタイミング
- 拝見所望のタイミング
- 拝見をするタイミング
などが全部決められていますので、「客がいかに機を逃さずに亭主の気持ちの良いタイミングでするか」が求められます。
ボーっとしていたのでは、二服点濃茶の客は務まりません。
むしろ客の方が気を抜けないお点前かもしれません。
茶通箱は唐物を使用しませんので、”他の四ヶ伝に共通する特徴とは異なる”というのもこの点前の大きな特徴です。
棚で稽古するのが基本ですが、運びでもすることが出来ます。
唐物(からもの) 特徴
「唐物」は運びで唐物茶入を使用するお点前です。
唐物の点前で覚えることは
- 唐物茶入の扱い
- 四ヶ伝共通の特徴
- 道具組
唐物茶入はこの点前を習うときに初めて出てきますので面食らう気もしますが、その後の奥伝の点前等にも通用する事が出てきますのでシッカリ覚えておく必要があります。
「唐物茶入を使用する時の扱いの勉強」というのが唐物点前の重要な課題ですので、いままで使っていた和物茶入の扱いを覚えておけばかなりスッキリ覚えることが出来ます。
唐物茶入の扱いには
- 帛紗捌き
- 清め方
- 茶入とその他の配置
などが含まれます。
配置が違っていたりすると、順序や他の道具の扱いまで変わっているように思えるのですが、”基本的な順序・その他の道具の扱い”というのは変わっていません。
換言すると、唐物の点前で問われるのは、「今までやってきた濃茶点前がきちんと解っているかどうか」です。
新しく増えた要素は何なのかを意識して覚えると、唐物点前は覚えやすくなると思います。
道具組に関しては、もう決まっているものですので覚えるしかないですね。
覚えるしかないと言っても、ナゼそういう道具なのだろうか?と考えたりすると覚えやすくなると思います。
使う道具が決まっているので覚えてしまえば、ある意味ラクです。
台天目(だいてんもく) 特徴
「台天目」は運びで天目と天目台を使用する点前です。
台天目で勉強するポイントは
- 天目の扱い
- 天目台の扱い
- 茶杓の扱い
- 四ヶ伝共通の特徴
天目は茶碗よりも格上のものですので、扱いが茶碗とは異なっています。
また、習いとしては天目は天目台と一緒に使用されますので天目台の扱いも必須です。
茶杓は清め方や扱いが今まで習ってきたお点前とはかなり違うのがポイントです。
台天目の点前の茶入は和物を使用するのが約束なので、茶入の扱いに関しては今までと基本は同様です。
ここがうやむやになっていると台天目の点前を覚えるのに苦労します。
台天目は「奥伝で使用する「天目と天目台」の扱いを覚える割り稽古」という側面もあります。
天目の扱いの特徴をしっかり理解できれば、それほど難しくないと思います。
天目というのは何なのか、この点前を習う時に少し勉強するようにしましょう。
最低限、七種天目くらいは覚えておくと問答がしやすいです。
併せて伝来も覚えておくと、奥伝の時の問答で役に立ちます。
この↓の唐物茶碗の本は天目の名碗が多く載っていて、金額も安いので是非読んでみてください。
盆点(ぼんだて) 特徴
「盆点」は盆に乗せる唐物茶入を使用して、運びで行うお点前です。
盆点で勉強するポイントは
- 茶入盆の扱い
- 盆に乗せる茶入の扱い
- 茶杓の扱い
- 四ヶ伝共通の特徴
使用する道具は「唐物」の点前と大差ありませんので、点前手続き的には唐物点前を勉強しておけばあまり面食らうことも無いと思います。
盆点で使用する”盆”というのはただの盆ではなくて”茶入盆”ですので、茶入を乗せる盆というところの意識が必要かと思います。
名物茶入の伝来の勉強をする際には、どんな盆が添っているのか、それとも添っていないのか等も見ておきましょう。
また、「盆に乗せる茶入とはどういった物なのか」なども知っておかなければいけませんので、道具に関する勉強をする事が大切になってきます。
盆点のお点前は奥伝のための割り稽古という側面もありますので、唐物茶入・茶入盆の扱いの基本を勉強していくことになります。
加えて、盆点で使用する茶入には伝来が必要になります。
茶道具の歴史の重み、深さを感じることのできるお点前が盆点です。
道具の伝来、盆の種類などの知識は聞きかじりよりも、本と美術館で見て勉強するのがおススメです。
「○○名物・中興名物・大名物」などという言葉もこの点前で出てくると思います。
和巾(わきん) 特徴
「和巾」は由緒のある裂に濃茶入を乗せて使用する点前です。
四ヶ伝ではありませんが、四ヶ伝の点前と同時期に習う事が出来ます。
和巾の点前では、淡々斎が稽古用として好んだ桑中次を使って稽古することが多いです。
実はこの桑中次でなければいけないという事ではありません。
和巾の点前では唐物道具を使用しませんが、水指正面や鐶付に和巾と濃茶入が置かれます。
和巾は ”唐物でなくても鐶付に置かれる物が出てくる点前”
ということで、鐶付に道具を置くという事がどういった意味合いがあるのかを考えさせるお点前となっています。
玄々斎が和巾の点前を披露したときの道具組を知るとより深く勉強できるかもしれません。
いや、むしろ混乱するかもしれません(笑)。
四ヶ伝の特徴 まとめ
四ヶ伝は唐物の扱いの基本を勉強するお点前が多いです。
似ているようで似ていない点前が集まっているので、唐物を使うかどうかで分けたりすると自分の中でのイメージがつきやすくなります。
- 唐物を使う 「唐物・台天目・盆点」
- 唐物を使わない 「茶通箱・和巾」
唐物道具・唐物に準ずる道具の扱いを勉強する→”奥伝の為の割り稽古”という面がありますので奥伝に向けて頑張って覚えたいところです。
「茶通箱」はほぼ今まで習ってきた事だけで出来ているお点前ですが、一碗で濃茶を二服点てるという奥伝につながる部分もあります。
四ヶ伝の覚え方は色々あると思いますが、「膝行・膝退がどこであるか」とか「揉み手があるか」とか「茶杓は何を使うか、清め方はどうか」など、いろんな視点から自分で考えると覚えやすくなると思います。
また、お茶友達と「揉み手があるのはどの点前?」とか「手を着いて茶碗の問答をするのはどの点前?」なんていうクイズ形式で問題を出し合うのも面白いです。
四ヶ伝を覚えていけるよう、気長に頑張っていきましょう。
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