裏千家茶道で一般に習うことのできる奥伝(おくでん)のお点前は4種類あります。
かなり昔から存在する「台子奥秘伝十二段」の中から二つ
- 真之行台子
- 行之行台子
それから、円能斎が作ったと言われる
- 大円真台子
- 大円草
の2つ。
あわせて4つのお点前を習う事ができます。
裏千家では奥秘伝と言われるお点前も、許状さえいただければ誰でも習う事ができますので、お茶の理解を深めたい方にはとても親切な流派だと思います。
他の流派ですと、「一般の方は盆点までです!」とか言われてしまうところもありますのでね。
ちなみに行之行と大円草は同時に許状を頂くことができますが、真之行と大円真はもっと上の許状になりますので、さらに1年経たないと申請できません。
真之行、円真まで習うと”裏千家で習う事の出来るお点前は ”一応全部習いました” ということになります。
奥伝を習うのは一般的に上記の4つだけとはいえ、口伝ということもあり教本などは特にありませんので、覚えるのにはかなりの時間と修行を必要とします。
茶名を申請できるのは真之行、大円真と同時に取れる”正引次”の許状取得から、さらに1年後となっています。
お茶名を取った方というのは、かなり長い年月お茶を稽古したのだという事がわかります。
※ 奥伝の点前手順その他の詳しい解説をした記事をnoteで書いています。有料コンテンツですが興味あればぜひ読んでみてください。下のリンクからどうぞ。
裏千家の十段って何?
昭和の前期くらいまでは裏千家の家元で十段稽古というものがありました。
十段というのは全部で12あると言われる台子奥秘伝から、一般に習える行之行と真之行を引いた数で10段という事です。
とはいえ、真之真台子は家元と後継者しか知ることが出来ないとされる一子相伝の点前ですので、十段稽古といいつつ、習うことができたのは実際には九段という事になります。
なので、本来は九段稽古というべきですが、なぜか十段稽古となっています。
裏千家の台子奥秘伝十二段は以下です。
真に4つ 「真之真、真之行草、真之行、真之草」
行に4つ 「行之真、行之真草、行之行、行之草」
草に4つ 「草之真、草之真行、草之行、草之草」
合わせると12段ですね。
それぞれに炉・風炉の点前があるので実際にはこの倍の点前がありますが、現在一般人に十段は公開されていませんので、家元で認める正式な十段の点前の内容は伺い知ることができません。
さらにさらに、これ以外に格外の奥秘伝として大円真と大円草があります。
大円真と大円草は12段の中になぜ入っていないのかというと、元々この2つの点前は円能斎(明治~大正時代の人)が作ったと言われるお点前で比較的新しく作られており、そもそも12段には入っていない格外の点前だからです。
台子十二段は少なくとも円能斎以前から存在していたという事ですね、お茶の歴史の深さを感じます。
巷では「十二段は利休居士が作ったものが変わらず脈々と受け継がれてきたのだ!」と仰る方もいますが、点前やそれに付随する考え方は時代によってかなり変化していくものですので、どうやら話半分で聞いておいた方が良さそうです。
書籍などでお茶の歴史を学んでみると参考になると思います。
しかも、淡交社から出ている辞書を見ていると、裏千家の奥伝は上記に挙げたお点前だけでは無かったりもします。
知らないことや、ほとんど知られていない事は実はいくらでもあるんですよね。
書籍を読むのは大事だなと感じます。
書籍を読むのは大事といっても、利休居士が自分で書いたとされる秘伝書というものは現存していませんし、利休時代の会記を読んだりすると、今の考え方ではなかなか理解しづらい事も多くでてきたりしますので知れば知るほど謎は深まります。
昔の茶の湯がどんなものだったのか知りたい!昔の人はどんな感覚だったのか知りたい!という方は是非「茶の湯文化学会」に入って勉強される事をおススメします。
茶の湯文化学会は ”茶の湯文化に関する唯一の学会” で、茶道文化に関する研究発表をかなり真面目にやっていますし、どなたでも入ることができますので非常に勉強になると思います。
巷で言われているような常識は、
実は昔からの常識では無い!なんてことがあったり、
これはお茶では常識だ!と思っていたことが実は自分の流派だけの常識だった!
なんて事が判ったりとか、お茶の奥深さを感じられて色々と面白いと思います。
現代のお茶しか勉強してこなかった方は、おそらくかなり価値観が変わると思います。
十段稽古は家元ではやっていない
家元では十段の稽古は昭和に中断されて以降、現在まで行われていません。
十段の稽古がいずれ家元で再開される日が来るかもしれませんが、自分が生きているうちに再開されるかどうかも全く不明です。
ですので、とりあえず許状を取得すれば習うことのできる奥伝の4つを頑張って覚えられるようにしたいですね。
次は、今現在正式に家元でも習う事の出来る、四つの奥伝のお点前はどんなお点前なのか少しだけ書いてみたいと思います。
真之行台子
家元以外の裏千家門人が習える最高の格のお点前が真之行台子です。
許状を頂いたときには「真之行䑓子傳法」とカッコよく書かれていて、「なんかスゴイ!」(語彙力。。)と思ったりしたものです。
真之行台子は真台子で唐銅皆具を使ったお点前で、つかう道具はすべて名物を使うというのが特徴です。
(お稽古ですので、その態で)
ですので、名物道具の扱いや名物というのはどんな道具があるのか、という勉強をすることのできるお点前になっています。
お点前の手順は当然覚えなくてはいけませんが、道具の知識が必須になってくるお点前だと思います。
真之行は書院の時代の点前だといわれ、道具の扱いがこれまで習ったお点前とはかなり異なりますが、これまで習ってきた基本的なルールがわかっていればそれほど違和感は無いかと思います。
昔の会記を読んでみたりすると当時はどんな道具を使っていたのか、などの所作以外のお点前に対する理解度も深まるのではないかと思います。
また、真之炭という真之行台子の前に行う炭手前があるので、セットで覚えておく必要があります。
名物道具を使う時の炭手前ですので、扱いなどがかなり違っていて非常に興味深いお手前になっています。
行之行台子
行之行台子は竹台子を使ったお点前です。
真之行が書院の時代(室町時代)と言われますが、行之行は利休の頃の時代(安土桃山時代)と言われたりします。
利休の時代は侘茶がかなり流行りましたので、真之行とはだいぶ違った雰囲気、道具組の点前となっています。
主道具に和物が入ってくるというのが、やはり大きな特徴なのではないかなと思います。
お点前的には
- 台子の濃茶
- 唐物
- 台天目
の3つの点前を合わせたような、お点前になっています。
基本となるこれら3つの点前をよく稽古しておくと理解しやすいのではと思います。
大円真台子
格外の奥秘伝で、真台子を使用し、大円盆という茶点盆(ちゃたてぼん)を用いた点前です。
真之行と同格とされていますが、そう捉えるにはなかなか難しいものがある気がします。
主道具を清めるのに意外なものを使うので、勉強ポイントが多いと思います。
和巾で誰もが抱く疑問も、この点前をすれば解けるのかもしれません。
大円真は円能斎が作ったお点前だと言われています。
大円草
大円草は大円盆という茶点盆を使用してするお点前です。
お点前の名前に台子とついていないことからわかるように、台子を使いません。
奥伝なのに台子を使わないってなぜなのだろうか?とか色々疑問が沸いて来て面白いお点前です。
濃茶の2服点のお点前になっています。
円能斎が作ったお点前だと言われています。
裏千家の奥伝
奥伝は許状が無いと内容を知ることは許されませんので、稽古場やネットの不特定多数が見られる環境では詳細を知ることはできません。
勉強するにはそれなりの時間と労力と、もちろんお金も必要になってきます。
時間はかかりますが、4種類ですので頑張って覚えればなんとかなると思います。
とはいえ炉・風炉あるので×2倍ではあります。
- 真之行台子 (炉・風炉)
- 大円真台子 (炉・風炉)
- 行之行台子 (炉・風炉)
- 大円草 (炉・風炉)
奥伝のお点前というのは手順がキッチリ決まっていて、小習のように状況によって変化する臨機応変さを求められたりはしません。
機転が利かなくても大丈夫なので、「奥伝はある意味カンタン」なんて言う方もいらっしゃいます。(このセリフを言えたら相当熟練されてますね)
奥伝の点前手続きを覚えたら、点前について自分で考えることも勉強になると思います。
ちなみにですが、裏千家の皆伝を許された田中仙樵の創った大日本茶道学会(三徳庵)では奥伝の書籍を出しています。
裏千家とはけっこう違うので興味がある方は見てみると興味深いかもしれません。
ですが、
自分が習った事と混ざってしまってゴチャゴチャになりそうな方には全くおススメしません、火傷します(笑)。
ということで、「裏千家の奥伝の種類【真之行・大円真・行之行・大円草】以外にもある点前 十段ってなに?」という話でした。
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