「歌枕」銘の意味がわかるとカッコイイ 知的な銘がわかったり自分で言えたりする大人になりたい

月、山 お茶の基礎知識
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お茶の稽古をしていると、銘を考えてお点前の問答の時に言う、という事をすると思います。
そんなときに、歌枕で銘を言ってくる方いますよね。

「竜田川」とか「井出の玉川」とか言われると、予備知識が無い場合「なんのこっちゃ?」と感じると思います。
少なくとも私は感じました。

お点前に慣れてくると、「好日」とか「瑞祥」とか「洗心」なんていう当り障りのない、言ってみればあまり面白くない銘よりも、「イメージが沸くようなステキな銘ないかなぁ~」なんて思ったりする人が多いのではないでしょうか。

ということで、今回は意味を知っていると途端にイメージが沸いてきてステキな銘に思えてくる「歌枕」についてです。

教養が感じられるようなステキな銘をお稽古で言ってみたい方や、「松風・村雨」と言えば須磨での行平がすぐにピンッと来るようになりたい方は読んでみてください。

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「歌枕」 地名+風景やイメージ

歌枕(うたまくら)とは和歌に多く詠まれる名所・旧跡などの地名のことです。
全国にムチャクチャたくさんありますので、今回はそのごくごく一部の紹介です。

ある地名を出しただけで、多くの人が同じ美しい情景や切ない感情を共有できる共通コードという感じのものが歌枕です。
有名な素晴らしい和歌があるとみんなそれを知っているので、どうしてもそのイメージに引っ張られるという感じでしょうかね。

京都にいながらにして、「竜田川」と詠めば頭の中に鮮やかな赤が広がり、「須磨」と詠めば寂しい波の音が聞こえるというような共通のイメージを持たせることが出来ます。

歌枕は、当時の人々の想像力を広げる便利なシステムだったということですね。
この場所と言ったら絶対にこのイメージだ!というワケではないですが定番のイメージは持っておいて良さそうです。
茶道具の銘として使うにも便利だと思います。

現代人の我々としては、そういったイメージがあるんだよという事を知っておかないと
「この銘はいったい何を表現しているの??」
ということになってしまいますので、基礎知識としてスタンダードは知っておきたいところです。

ちなみに歌枕というのは地名のことだと現代では思ってしまいますが、かつては違っていて和歌で使われる言葉や歌詞(うたことば)、あるいはそれらが書かれた書物のことだったそうです。

吉野(よしの/奈良県)【歌枕】

桜

イメージ:「ステキな別荘地」、「雪」、「桜」

多くの天皇が遊びに行った、いや行幸した吉野宮。
野山に咲く桜の美しさや雪を詠まれる。
桜の咲いた様子を雪や雲みたいだな、という表現も定番。

神代より 吉野の宮にあり通ひ 高知らせるは 山川を良み 山部赤人
あさぼらけ 有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪 坂上是則
み吉野の 山辺にさける 桜花 雪かとのみぞ あやまりてける 紀友則

三笠山(みかさやま/奈良県)【歌枕】

月、山

イメージ:「月」、「神聖さ」、「古都奈良」

仲麻呂が詠んだことで有名な三笠山は御蓋山のこと。
月と三笠山の組み合わせが多く、春日大社との組み合わせから神聖さや、古都奈良への望郷の思いと共に詠まれたりする。

天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に いでし月かも 阿倍仲麻呂

高砂(たかさご/兵庫県)【歌枕】

イメージ:「松」「砂浜」

美しい砂浜や松(尾上の松)のイメージ。
能の「高砂」でも有名で、相生の松、夫婦和合のイメージもある。
地名というより松や尾上の枕詞で使われたりも。

高砂の尾上の桜咲きにけり外山の霞立たずもあらなむ 大江匡房

志賀・志賀の浦(しが・しがのうら / 滋賀県)【歌枕】

イメージ:「桜」、「さざなみ」

かつて都(大津京)があった場所。
かつての栄華を思い起こさせる桜や、志賀の浦の静かな波が詠まれたりする。

さざなみや 志賀の都はあれにしを 昔ながらの 山桜かな 平忠度
志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有り明けの月 家隆

竜田川(たつたがわ / 奈良県)【歌枕】

イメージ: 「紅葉」

川一面を真っ赤に染めて流れる紅葉。
鮮やかな色彩美が詠まれる。
竜田山の女神が「竜田姫」で秋をつかさどるといわれる。

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは 在原業平

小倉山(おぐらやま / 京都府)【歌枕】

イメージ:「紅葉」、「鹿の鳴き声」

嵐山と双璧をなす京都の秋を代表する山。
美しく散る紅葉や、秋の寂しさを引き立てる恋を求める鹿の切ない鳴き声もイメージされる。

小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ 藤原忠平
夕されば 小倉の山に 臥す鹿の 今夜は鳴かず い寝にけらしも 舒明天皇

姥捨山(をばすてやま / 長野県)【歌枕】

イメージ:「月」

冠着山の別称。寂しさと結びついた、美しく切ない月の名所。
涙を誘う景色として詠まれる。

わが心 なぐさめかねつ 更級や 姥捨山に 照る月を見て よみ人しらず

須磨(すま / 兵庫県)【歌枕】

イメージ:「藻塩を焼く煙」、「塩を焼く人」、「関所」

都を追われた貴人が行き着く寂しい侘び住まいの地の代名詞。
海岸で塩を作る人の様子に絡めて哀愁のある歌が詠まれたりする。
在原行平が須磨に流されたときに仲良くなったのが「松風・村雨」姉妹とされる。

わくらばに とふ人あらば須磨の浦に 藻塩垂れつつわぶと答へよ 行平

松島(まつしま / 宮城県)【歌枕】

イメージ:「雄島」、「海人(あま)」、「濡れた袖」、「月」、「波」

陸奥(みちのく)を代表する絶景。
陸地から近い雄島とそこにいる海人の濡れた袖、そして美しい月や波がイメージされる。
のちに松尾芭蕉も憧れた地。

見せばやな 雄島のあまの袖だにも 濡れにぞ濡れし色は変らず  殷富門院大輔

三保の松原(みほのまつばら / 静岡県)【歌枕】

イメージ:「富士山」、「松」、「清見潟」、「羽衣」

美しい海岸線と松、富士山の神々しい景色。
有名な「田子の浦」もわりに近い場所で、同様に富士山をイメージさせる。
天女が松に衣をかけたという「羽衣」でも有名に。

清見潟 富士の煙や消えぬらむ 月影みがく 三保の浦波 後鳥羽院
田子の浦ゆ うち出でて見れば真白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける 山部赤人

勿来の関(なこそのせき / 福島県いわき市)【歌枕】

イメージ:「関所」、「来るものを拒む境界線」、「恋人間の壁」

常陸から陸奥の間にある関所。「勿来(なこそ)」は古語で「来るな」という意味。

吹くかせを なこそのせきとおもへとも みちもせにちる 山桜かな 源義家
勿来とは たれかはいひし いわねども 心にすうる 関とこそみれ 和泉式部

白河の関(しらかわのせき / 福島県白河市)【歌枕】

イメージ:「遠くの異郷」、「だれもいなくなった場所」

陸奥への入り口。平安時代の後期になると関所の役割は終えるが歌枕としては人気。
かつては関所だったが誰もいなくなってしまった寂しい場所というイメージが多い。
都からはるか遠い異郷へ来てしまったという旅人の孤独感を表現したりする。

都をば 霞とともに立ちしかど 秋風ぞ吹く 白河の関 能因法師

逢坂の関(おうさかのせき/滋賀県)【歌枕】

イメージ:「人が別れたり出会ったりする場所」、「逢う」

滋賀(近江)と京都(山城)の国境にあった関所。
京都を出る人と入る人が交錯したり、「あふさか」から男女が逢うなどの連想も。

夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関は許さじ 清少納言

広沢の池(ひろさわのいけ / 京都府)【歌枕】

イメージ:「月見」、「過去の賑やかさと静かな月」

平安時代から月見の名勝として知られる。
瀬戸の金華山に広沢という牙蓋に特徴のある茶入がある。
大沢の池もすぐ近くにある。

いにしへの 人はみぎはに 影絶えて 月のみすめる 広沢の池  源頼政

六玉川(むたまがわ/全国の有名な6つの玉川)【歌枕】

玉川といえば有名な六つの玉川があります。
それぞれにイメージがあるので、興味深いです。

井出の玉川(いでのたまがわ/京都府)「歌枕」

イメージ:山吹、蛙

山城の国 山吹の名所として有名で、とらやさんの「井出の里」という銘のお菓子は山吹のイメージ。

音にきく 井手の山吹 見つれども 蛙の声は 変らざりけり 紀貫之

野路の玉川(のじのたまがわ/滋賀県)「歌枕」

イメージ:萩

近江国 萩の名所として知られた。

あすも来む 野路の玉川 萩こえて 色なる浪に 月宿りけり 源俊頼

野田の玉川(のだのたまがわ/宮城県)「歌枕」

イメージ:千鳥、潮風

陸奥国の玉川 京都からはだいぶ遠いので実際に行って詠んだ人は多くはなさそう。

夕されば しほ風こして みちのくの 野田の玉川 ちどり鳴くなり 能因法師

三島の玉川(みしまのたまがわ/大阪府)「歌枕」

イメージ:卯の花、砧で打つ音

摂津国 擣衣の玉川などともいわれる。

見渡せば 波のしがらみ かけてけり 卯の花咲ける 玉川の里 相模
松風の音だに 秋はさびしきに 衣うつなり 玉川の里 源俊頼

調布の玉川(ちょうふのたまがわ/東京都)「歌枕」

イメージ:手織り(たづくり)の布、川でさらす布

武蔵の国 多摩川でさらした布はこの地域の特産だった。
調布と書いて「てづくり/たづくり」と読んだりもした。

多摩川に さらす手作り さらさらに 何そこの児の ここだかなしき 万葉集

高野の玉川(こうやのたまがわ/和歌山県)「歌枕」

イメージ:???

紀伊の高野山を流れる玉川
下の歌は弘法大師が詠んだとされる和歌ではあるが、本居宣長が後世の人間が詠んだものだと言っていたりする。
そして今回のテーマである歌枕のイメージとしては正直、??という感想。
内容も毒虫の毒が川に流れてしまっているので、旅人が知らないで汲んでしまうだろうか…。的な内容で、なんだこの歌は?と言う感じ。
しかも他に高野の玉川を詠んだ歌は…あるの??
知ってたら誰か教えてください。

忘れても 汲みやしつらむ 旅人の 高野のおくの玉川のみづ 弘法大師

銘に使う「歌枕」を知りたい まとめ

最後の歌枕のイメージが??になってしまい中途半端になってしまいましたが、とにかく歌枕というのはとても面白いですね。

和歌の中で地名を出すと、何となくこんなイメージがあるよ~みたいな事をイメージしてもらえたなら嬉しいです。

実際に現地を訪れて、和歌の世界に思いをはせてみるのもなかなかロマンあると思います。

ということで、知的な銘にきこえる歌枕を知っておきたいという話題でした。

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