茶席では、ほぼ必ず和菓子が出てきます。
お茶会には行ったことが無くても、これを読んでいるかたは観光地などの呈茶席に入って、和菓子を食べて抹茶を飲んだ事があるのではないでしょうか。
慣れていないと、抹茶とお菓子を出されても「作法がわからない・・」なんて思って困ったりしますよね。
この記事では茶席で出されるお菓子は ”どうやって取って、食べたら良いのか” また ”作法うんぬんよりも、もっともっと大事な事” をわかりやすく解説します。
なんだかややこしそうですが、実はとても簡単なので誰でもスグにできますし理解できます。
注意点など色々書いているので、長文ですが実際は大したことしてないのでご安心を。
ということで、いざという時に困らないよう少し勉強しておきましょう。
和菓子の食べ方・取り方【茶席】
お菓子の食べ方は7つステップがあります。
ステップが多くて難しそうに感じるかもですが、実はメチャクチャ簡単なのですぐ覚えられます。
これを覚えたら、お菓子の後に出てくるお茶を飲むときにも応用できますので、ぜひ覚えてください。
- お菓子を出されたらおじぎ
- 次の方に「お先に」
- お菓子(器)を押し頂く
- 懐紙を出して上にお菓子を乗せる
- 箸を懐紙で拭く
- 菓子器を隣の方へ回す
- お菓子を食べる
食べ方や順番うんぬんは実際やってみればそんなに難しくないのですが、その前に大事なことを書いておきます。
お菓子というのは出されたことに感謝をして、お菓子に託された意図を想像しながらおいしく食べていただければ何も問題ありません。
順番や作法が決まっているのは”礼を以て物事を円滑に運ぶ”というのが主な理由です。
ですので、茶道をやっていない人が「順番を間違えた~!」とか「やり方が違っているのか?どうしよう!」などという事は
全く、マッタク!いっさい、1ミリも気にしなくて大丈夫です!
もし、「それはそうじゃない」とか横からゴチャゴチャ言ってくる人がいたら
フッ、まだそんな些細な事にこだわっておるのか、おぬしシロートでござるな?
って言ってやりましょう(ウソ)。心の中でね。。
今回説明するのも、裏千家のやり方であって他の流派にいくと全然やり方は違いますからね。
繰り返しますが、大事なのは
美味しかったら「スゴク美味しかったです!」とか「キレイなお菓子でうれしくなりました」などと前向きな感想を伝えることです。
ポジティブなことを言ってもらえるだけでもお菓子を出した亭主としては嬉しいのです。
この辺は日常生活と同じですので、ぜひ覚えておいてください。
ということで、お菓子の取り方と食べ方の細かいところを見ていきます。
【和菓子の食べ方】菓子を出されたらおじぎ
亭主側のお運びをしてくれるかたがお菓子を持ってきてくれたら、お辞儀をされますので合わせて”おじぎ”をしましょう。
はい、あたりまえのやつです(笑)。
誰でもできますよね。
仕事とかで取引先にお邪魔して、お茶とお菓子を出されたときに「どうぞ」と言われ、おじぎをされたら、たいていの日本人はおじぎしますよね?
まったく同じことです。
茶道を習っていないと緊張してしまって、「どこでお辞儀をしたらよいのかわからない」と思うかもしれませんが、日常生活と同じく
”相手がおじぎをしていたらおじぎ”をしましょう。
やり方がよくわからないので、
相手がおじぎをしていても ガン無視!
みたいな感じになっている人がものすごく沢山います。いやホントに。。。なぜなのかな??
「偉い方ですか?大名か貴族の方ですか?(笑)」って思われちゃいます。
傍から見てるとわかりますが、おじぎをしないとすごく不自然です。
お茶といえど、普通で良いんです、普通で。キーワードは”普通に”です。
日常生活で相手がおじぎしたら、おじぎしますよね?それでOKです。
【和菓子の食べ方】次の方に「お先に」
「お先に」が、日常的に出来る人がいますよね。
隣の人よりも”先にお菓子を取らせてもらう”ので「お先に」とか「お先に頂戴します」と言うだけのことなんです。
またもや、めちゃくちゃ簡単ですね。
お茶では何かにつけて「お先に」って言ったりするので、ここで「お先に」と言う習慣を身につけてしまいましょう。
お菓子の後にでてくる抹茶を飲むときにもこのスキルを使います!
【和菓子の食べ方】お菓子(器)を押し頂く
「”押し頂く”ってなに?」 って思いませんか?
私は思いました。
押し頂くというのは ”目より高くささげて持つ”ってことです。下の引用の①のやつです。
おし いただ・く 【押(し)頂く】( 動カ五[四] )
①物を目より高くささげて持つ。また、うやうやしい態度で物を受け取る。 「お墨付きの文書を-・く」
②目上の人として敬い仕える。 「会長に-・く」
三省堂 大辞林
小学校の卒業式とかで卒業証書を受け取るときにするのと同じヤツですね。
この ”菓子器を押し頂く”ときに注意してもらいたいのですが、菓子器をあまり上げないように自分の頭を下げてください。
- おじぎをしながら菓子器を押し頂く 感じです
ナゼかと言うと、”あまり高く上げると危なっかしく見えるから”です。
干菓子ですと簡単に盛られた形が崩れたりしますので、なるべく”大事に大事に”押し頂きましょう。
主菓子は崩れたりすることはあまり無いですが、菓子器がムチャクチャ高価な事があるんでゼッタイ落としたりしないよう気をつけてください!
高く上げるのは「ダメ!ゼッタイ!」
茶席にはドン引きするほど高価な器がシレっとに出てきてたりします。
周りでみていると危なっかしい扱いの人は非常にハラハラしますので、あんまり高く上げないように注意してください。
【和菓子の食べ方】懐紙の上にお菓子を乗せる
押し頂いた後は懐紙を懐(ふところ)や、数寄屋袋から取り出して「わ」や「わさ」と言われる方を自分の方にして懐紙を畳の上に置きます。(縁内に)
懐紙のバラバラになっている方は向こうに向けるってことです。
上の写真がそうなってますね。見づらいんですけどよく見てみてください。
このとき縁(へり)の上に懐紙を置かないようにしてください。
縁の上は懐紙だけでなく全てのものを乗せません。
次に、菓子器の上に乗っている黒文字の木で作られている箸や楊枝を使い、さきほど出した懐紙の上に和菓子を乗せます。
菓子器の中にお菓子が複数ある場合には、末客以外の方はなるべく中央の菓子は取らないようにしてください。
一番最後の人が残り物を取らされるような形になるのを避けるためです。
さて、箸の使い方は一般的な箸の使い方をすれば大丈夫。
このとき
なるべくお菓子の下の方を持ったり、すこし刺したりしてキレイな姿を保てるように注意してください。
懐紙の上に乗せたときに、
お菓子を”見るも無惨な姿”
に、してしまう人がけっこう多いですが、少し工夫すればキレイな姿のまま取る事が出来るはずです。
次の人が取るであろうお菓子の形を崩してもダメです。他の人が食べるものは箸でも触らないようにしてください。
あたりまえですけどね。でもコレが意外とできないものです。
お菓子を取ったら、箸先を自分の懐紙でぬぐってキレイにして、菓子器の上に元の通りにキレイに乗せます。
懐紙で箸をぬぐう理由は、もし自分が菓子を取るときに箸の先にアンコがたくさんついてて
「なんかキタナラシイよ!使いっぱなしかよ!」
って思うような状況だったらイヤじゃないですか?
だから、自分が汚したものは自分でキレイにして次の方へ回すっていうだけなんです。
これもごくごくあたりまえの行動ですよね。保育園とかで教わるようなレベルです。
次のかたへの気遣いを少しだけするってことです。
はい、誰でもできますしカンタンです。
今のところ難しいことは一つも出てきていませんし、これからも出てきません。
【和菓子の食べ方】菓子器を隣の方へ回す
菓子器の上に黒文字を戻したら、となりの方に菓子器を回します。
回すっていっても回転させるのではなくて、パスするってことです(投げないでね)。
畳の縁(へり)の外に置かれて自分のところに回ってきた場合には、縁の外に置いて回します。
縁の内側に置かれて自分のところに回ってきた場合には、縁の内側に置いて次の方へ回します。
はい、モノスゴく単純です。
逆にいえば、縁外(へりそと)で回ってきたものを縁内(へりうち)で次のかたへ回したりしないようにすればOKですね。
ちなみに、縁の上に菓子器を乗せてしまったりしないようにしてください。
縁の上には物は何も置いたりしないということを覚えておいてください。
【和菓子の食べ方】お菓子を食べる
懐紙ごと持ち上げて、ご亭主の用意してくれたお菓子をしばし鑑賞します。
このときお菓子が原形をなるべく留めているようにして下さいね。
お菓子を作った人は丁寧に形を整えて作ってくれているわけですから、食べる前にボロボロで台無しにしないようにしてください。
次に、自分で用意した菓子切や黒文字を使ってお菓子を食べやすいサイズに切ります。
いくつに切っても良いですが、そのまま噛りついて歯形が残るようなことをするのは避けた方がよいかもしれません。
(ま、流派によっては噛り付いても良いとこもありますけどね)
例外は川端道喜の「御菱葩」(いわゆる花びら餅)。
餡がトロトロでサラサラなので、ガブっとしてチューチューしたりします。
さて話を戻して、お菓子を菓子切で切った後は刺して食べるだけです。
ハイ、めちゃくちゃ簡単ですね。
茶室で食べるからと言って特別なことはほとんどありません。
お菓子を食べた後は懐紙の汚れた面を内側にして1枚だけ折りたたんで、自分で持って帰るようにしましょう。
「あのこれゴミなんですけど~、捨ててもらえますか~?」
なんて、間違っても亭主側の人に言ってはいけませんよ。
茶道の場合というか公共の場では、自分で出したごみは自分で持って帰るのが基本的なマナーです。
これも日常では当たり前ですよね。
ということで、お菓子の食べ方は以上になります。
大したことやってないので、誰でもできますね。
簡単すぎて以外に思われたかもしれません。
主菓子、干菓子と注意点など
さて次は茶席で出されるお菓子はどんなものがあるのか?という話です。
ここからはお菓子の種類についてです。
実はお菓子の種類によっては若干、食べ方が異なります。
お菓子の種類を知ることによって、対応しやすくなります。
茶道で出されるお菓子は
- 主菓子(おもがし)
- 干菓子(ひがし)
の2種類がほとんどです。
主菓子
主菓子は薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)、きんとん、練り切り、こなし、ういろう、求肥(ぎゅうひ)などでできたボリュームのある上生菓子です。
薯蕷饅頭だけは手で割って食べるのがおススメです。
菓子切で切ろうとすると、懐紙からポトッと落としてしまう人が続出するからです。
その他の主菓子は黒文字や菓子切で切って食べてください。
主菓子は茶事の懐石の後に出されるのが本来ですが、一般的に薄茶の茶会のときにも出されます。
主菓子が「濃茶に付いているお菓子」なんていう説明をよく見かけたりしますが、あれははっきり言ってウソです。
というか、初心者にもイメージしやすいようにわざとわかりやすく言っているだけです。
本来は会席(懐石)に付いているお菓子になります。(大寄せの茶会しか知らないとイメージしにくいですからね)
季節柄のお菓子を見たりすると、「あぁそういう季節が来たなぁ」と実感するものです。
ちなみに私は自分用としてお菓子を買うことはあまりないですが、とらやさんの栗粉餅は大好きなので、秋になるとお店のイートインで食べたりします。
本当に美味しくて毎回感心しています。
「餡と一緒に食べてるのに、栗の味がちゃんとするぅぅ!うぉぉ、すごい!」と思ってます。
そして、栗と言えば岐阜の「栗きんとん」も大好きです。
「これぞ栗じゃい!」って感じの食べ応えがタマランのです。
栗と砂糖だけでこんなに美味しい食べ物ができるなんて!
平気で3つ4つ食べられます(食べ過ぎ)。
しかも岐阜の栗きんとんはお客さんに出すとゼッタイに喜ばれるので、こちらも嬉しくなってしまうのです。
主菓子は基本的に生菓子なので、柔らかいです。
器から取るときには、形を崩さないようにキレイなまま取って、食べる直前までキレイな姿を保つようにしましょう。
干菓子(落雁・煎餅など)
干菓子は字の如くの水分量の少ない和菓子で、煎餅、落雁、有平糖、州浜、紋菓などがあります。
これは茶事という本格的な茶会では、薄茶の席でだされ、お菓子を食べてお茶を飲むことになります。なので薄茶に付いているお菓子です。
乾いたお菓子なので、手で菓子器から取って懐紙に乗せて、手で食べるのが特徴です。
要するに手づかみで食べます。
「え?手づかみして良いの?」って思うかもしれませんが、干菓子というのはそういうものなので手づかみです。
ただし、自分が取るお菓子以外のお菓子には触ってはいけません。
あたりまえ(笑)
「どれにしよ~かなぁ~」なんて言って人が食べる分のお菓子まで触られると、次に取る人が嫌な気分になりますので注意しましょう。
干菓子の食べ方
落雁などの干菓子の食べ方は手づかみで良いので、非常に簡単です。
- 菓子器を出されたらお辞儀
- 「お先に」と次の方へ挨拶
- 菓子器を押し頂く
- 懐紙を出す
- 干菓子を懐紙へ乗せる
- 干菓子器を次の方へ送る
- 食べる(てづかみ)
カンタンに言うと、お先にと言ってお菓子取って次に回せば良いだけのことです。
まとめ お菓子を食べる時に一番大事なこと
ここまで和菓子の取り方、食べ方、注意点などを説明してきました。
まとめるとこうなります。
- 周りの方への配慮をしつつ取って食べる
はい、これに尽きます。
これに注意をして行動すれば何も問題無いハズです。
さて、主菓子も干菓子もそれぞれ多くの種類があり、茶席で出てくるのはその季節(よりも少しはやい)のお菓子が基本です。
”茶道では”というか、”日本文化は”と言ったほうが良いかもしれませんが季節の先取りをします。
8月に入って少しすると「風の中に少しだけ秋の匂いを感じる気がする。。」なんて事があると思いますが、そういった感覚を大事にしています。
8月に入るとスグに立秋になりますからね。
まだまだ暑い9月の初め頃、菊の意匠のお菓子が出てきたりすると秋を感じたりします。
「まだまだぜんぜん暑いんですけど、もう秋が来てるのか。。。(汗)」
みたいな(笑)
和菓子屋さんに行きますと、その季節毎のお菓子が並んでいますので、見るだけでも季節を感じることができます。
ぜひデパートの食品売り場にでも行ってみてください。
また、忙しい日常の合間にお茶の稽古に行ってお菓子を見たり、食べたりして季節を感じたりすると、その一瞬はなんだかほっこりしますね。
つまりは、一番大事なのは
「お菓子に季節感や亭主の意図などを感じ取って、美味しく食べてください」
ってことです。
できればポジティブな感想を伝えると良いです。
簡単なようでこれが難しいんですけどね。。。
すこし知識がついてくるとついつい批判的なこと言ったりしてしまうのですが、そういうのはまだまだ修行が足らん!証拠です。
相手の意を汲み取ってその場をポジティブな空気感にできる人になっていただきたいです。
あなたはどんなお菓子を食べると季節を感じますか?
日本ならではの四季を感じる美しいお菓子を、ぜひ五感で味わって食べてみてください。
以上、【お菓子の取り方・食べ方】順序、注意点 という話しでした。
コメント
わかりやすく丁寧で
でも、無知な自分にも優しく穏やかに教えてくださるような
そんな書き方が心地よく
するりと読み終えてしまいました。
特に、お菓子を可愛いとか美味しいと素直に表現しても良いと
書いてあったのが、
なんだかすごく気持ちを軽くしてくれて、嬉しかったです!
先だって京都御所で『ことほぎの菊』という
上品で非常に美味しいお菓子を買い、茶菓子に興味を持ちました。
十代の頃、ゼリーで作ったような松茸の形をした干菓子があまりにも可愛くて
はしゃいでいたら持って帰っても良いと言われ帰宅後もしばらく食べられず眺めていたことを思い出しました。
わたしはもうアラフィフですが
ワクワクする気持ちは変わらないものですね。
お邪魔しました。
コメントありがとうございます。
ことほぎの菊ですか。みやびですね〜
さすが京都って感じです。
お菓子眺めるだけで幸せな気分になれるってすばらしいことですよね。
よかったらまた他の記事も読みに来てください。