裏千家の茶道を始めて最初に習うお点前は薄茶点前です。
薄茶点前は今後習うお点前の基礎になりますので、シッカリ覚えておきたいのですが
「覚えられない!」という方も多いと思います。
「割り稽古までは大丈夫だったのに、薄茶になったら混乱した」というかたもいるかもしれません。
順序を丸暗記するってスゴク大変じゃないですかね?
体で覚えろ!なんて言われたりしますが、「もうちょっとヒントを!」と思ったのは私だけでは無いハズです。
実は「薄茶点前は何をしているのか」ということがわかっていれば、順番などを丸暗記で覚えていなくても、次に何をするのかがわかります。
しかも、薄茶以降に習う点前にも応用できるので、この考え方にはメリットは大きいです。
要するに丸暗記しなくても大丈夫なのです。
このページでは「そもそも薄茶は何をしているのか」を明らかにした上で、点前の覚え方について書いています。
ちなみに、点前の三要素と言えば「順序・動作・位置の決定」ですが、今回は「順序」についてです。
※ 注意点ですが、ここでは”覚え方・考え方”を書いているので、細かい手順について書いてあるわけではありません。
このページを読んでも何の事やらワカラン!というかたは、まずは全体の流れを把握するために教則本を購入しましょう。
薄茶を覚えるためには教則本を細かく見ておくのも大事です。
カラーの写真がたくさん載っているので、淡交社から出ている新しい教則本はおススメですよ。
薄茶点前の覚え方「順序」の前に
薄茶点前を覚えるために
- 薄茶点前は何をしているのか
- その時の配置
を意識してお点前について考えるのがおススメです。(今回の解説はこの「1」の部分です)
この覚え方は記憶勝負よりもロジックで覚える方が得意だという方に理解しやすいと思います。
しかも、その後に習うお点前にも使える考え方となっているので、ずっと使えます。
ホントです。
これさえわかれば、あとは割り稽古で習った通りにすれば良いので薄茶点前は簡単!と思えるはずです。
たぶん。
ここではいわゆる平点前といわれる「風炉・運びの薄茶(本仕舞い)」を例に挙げて説明します。
ということで、そもそも薄茶とは何をしているのか?から話を始めます。
薄茶点前は何をしているのか
薄茶の点前は大きく分けると5つのパーツに分けられます。
- 道具の準備
- 道具を清める
- お茶を点てる
- 仕舞う
- 道具を拝見に出す
大きく分ければ、薄茶点前でやっていることは5つだけなのです。
そして、点前の配置はこの5つの段階ごとに変化していきますが、それほど難しくは無いので安心してください。
ここでは順序について説明するので、配置に関しては別の機会に解説しようと思います。
【薄茶点前】順序・手順について
薄茶の点前だけに限らず、濃茶点前でも、その他の点前でも、お茶を点てる点前であれば
- 道具の準備
- 道具を清める
- お茶を点てる
- 仕舞う
- 道具を拝見に出す
という5段階は変わりませんので、是非なんとな~くでも覚えてください。
この5つの流れを思い出せれば、順序の根本はマスターしたも同然です。
簡単ですね。
順序に迷ったら今は何をしている段階なのかを思い出してください。
以下で少し細かく解説していきます。
【薄茶点前の順序1】道具の準備 (運び出し)
お点前を始めるには点前座に道具の準備をします。
運びの薄茶の場合では道具の運び出しです。
順序は
- 水指
- 茶碗・薄器
- 建水・蓋置・柄杓
3回運び出せば点前の準備は完了です。
点前座の「向こう側」に置く物から運び出せば良いので、忘れたくても覚えてしまいますね。
1段階目はこれで終了です。
建水を持ち出し座ったら、スグに柄杓を取って蓋置の上に引きます。
【薄茶点前の順序2】道具を清める
道具の運び出しをして、点前の準備が終わったら2段階目は道具を清めます。
清める順序は
- 薄器
- 茶杓
- 茶碗+茶筅
清めるのはこの3つで完了なので、スグに覚えられると思います。
つまり抹茶に接する順に清めます。
薄器は既に抹茶に触れていますし、茶杓は抹茶を掬うとき、茶碗は抹茶を入れるときに触れます。
点てるときの順番と同じなんですね。
ちなみにこの順序は濃茶だろうが、荘り物だろうが、四ヶ伝だろうが、キホンは共通だったりします。
清めるためには膝前にそれぞれの道具があった方がやりやすいですから、茶碗を膝前向こう、棗をその手前に置きます。
それぞれの清め方は割り稽古で習った通りですので、うろ覚えの方は割り稽古をしっかり稽古してください。
正直言って割り稽古さえキッチリ美しくできれば、順番など覚えてなくても先生がその都度言ってくださるのでなんとかなります(笑)。
チョット脱線しますが、順番なんぞいくら覚えても”割り稽古”がテキトーな人はキチンとした点前に見えません。
「そんなんど~でもえぇねん」
と、お茶の先生がよく言うのは大事なことに注力しろ、本質を知れという意味です。
割り稽古は点前の土台となる、とても大事な部分なのです。
道具を清めたら、お茶を点てるための配置に置いておきます。
【薄茶点前の順序3】お茶を点てる
そして3段階目は抹茶を茶碗に入れてお茶を点てるだけです。
ただしここでのポイントは
「抹茶を茶碗に入れたら水指の蓋を開ける」
という点だけです。(1服目だけ)
二服目以降は茶碗をすすいで薄茶を点てるだけなので、ムチャクチャ簡単ですね。
薄茶は「お仕舞を」と言われるまで何服でも点てます。
こんなに簡単にメインのお茶を点てるという段階までもが終了しちゃいます。
【薄茶点前の順序4】道具を仕舞う
お客様の方から「どうぞお仕舞いを」の声がかかれば、
右手で一度受けてから茶碗を膝前に置き「お仕舞いに致します」と挨拶して、道具を仕舞っていきます。
4段階目は仕舞っていく作業です。
ここでのキーワードは”元に戻す”です
仕舞っていく順番は
- 茶筅通し
- 茶巾+茶筅
- 茶杓
- 建水 移動
- 茶杓清める
- 棗+茶碗 移動
- 仕舞水
- 釜の蓋
- 柄杓を蓋置へ
- 水指の蓋
「いやいや、これじゃ数が多くて覚えらない!!」と思うかもしれませんが、問題ありません。
「道具を仕舞っているのだ」という事だけ思い出せれば覚えなくても大丈夫(なはず)です。
「道具を仕舞う=元の姿に戻す=清める」
という事だけ意識してください。
もとのキレイな状態に戻していくというのが仕舞うという作業の根本なのです。
さて、どう考えていけば順序通りできるのかですが、
今、目の前にあるものを片付けていくのが基本です。
お仕舞がかかるタイミングは左手に茶碗を持っているので、「まずは手に持っている茶碗を清めよう」というのはスグに思いつくはずです。
茶碗を清めるためには茶筅が必要になると考えれば、茶筅通しも自動的に完了します。
茶碗の水を建水へ開けたら、茶巾を取るのを忘れがちですが、「今は仕舞っている最中だ」という事を思い出せば茶巾を取って茶碗に入れることを思いつくはずです。
「仕舞う」ということは →「点前が始まる前の、茶碗に仕組んだ一番初めの形に戻すこと」ですからね。
そのあとは茶筅を入れるのですが、これも「今は仕舞っている最中だ」ということを思い出してもらえれば茶筅を入れることを思い出せると思います。
次に茶杓ですが、やっぱり 「今は仕舞っている最中だ」 と思えば茶杓を茶碗に乗せたくなります。
ポイントは、茶杓を使い終わったら清めなくてはなりませんので帛紗で清めます。
清めるために茶杓を持ったら建水を勝手付に寄せる必要があるので、これは覚えておく必要があると思います。
茶杓を茶碗に乗せ、帛紗を建水の上で払ったら、元の位置(水指前)に道具(薄器+茶碗)を戻します。(本仕舞い)
つまり、運び出したときの姿に戻す(仕舞う)という事です。
「茶碗は元の形に戻ったので、あとは配置を戻せばOKだな」と思い出せればイケるはずです。
お茶では基本的に元の姿に戻すという事をしますので、配置に関してはわかりやすいですね。(風炉の中仕舞いは元の姿に戻りません)
元の配置に戻ったら仕舞水をします。
釜の水の水位を元に戻すわけです。
仕舞水のタイミングは覚えておく必要がありますが、後々いろいろなお点前を習うときにも共通の考え方なので、是非覚えてほしいです。
「元の配置に戻ったら仕舞水!」 と呪文のように唱えるのがおすすめ(笑)
お点前は意外と”合理的&共通の考え方”で構成されているのです。
さて、仕舞水をしたら釜と水指の蓋を閉めます。
柄杓を持っているので、「構えて釜の蓋」はスグに思いつくと思います。
なぜなら、”元の姿に戻したい”わけですから、釜の蓋を閉めて柄杓を蓋置に引きたいですよね。
柄杓を蓋置に引いて両手がフリーになったところで、次に水指の蓋を閉めます。
水指の蓋は次の段階の「拝見に出す」のために必要な合図となる動作なので覚えておく必要があります。
色々見てきましたが、この4段階目でやっていることは全部
「点前が始まる前の姿に戻す」(元に戻す)
という事をやっています。
まとめると「仕舞う」という段階は点前が始まる前の姿に戻すのだ、という事をひたすら思い出せればできるはずです。
【薄茶点前の順序5】 道具を拝見に出す
薄茶の点前の5段階目は「道具を拝見に出す」ということをします。
水指の蓋を閉じて「お薄器、お茶杓の拝見を」と言われたらお辞儀をして受けます。
ここでゼッタイに覚えてほしいことがあります。ここは記憶してください。
「拝見と言われたら柄杓・蓋置を片付ける」
です。
”拝見かかる→柄杓・蓋置”という流れは、この先ほとんどのお点前で通用しますので是非覚えてください。
重要な記憶ポイントです。
柄杓蓋置を片付けたら、茶碗を勝手付に寄せるのですが、これは忘れがちです。
”茶碗はさみしがりなので、薄器が隣にいなくなる時には建水たちの方へ仲間にしてあげる”くらいの覚え方とかで良いかもしれません(覚え方はなんでも良いと思いますが)。
あとは棗を客付きで清めて出して、茶杓を出して道具を持って帰るだけです。
水屋に帰るときには、一番手前にある柄杓・蓋置・建水から持って帰ります。
持って帰る順序
- 柄杓・蓋置・建水
- 茶碗
- 水指
要するに、手前のものから段々と向こうにあるものを持って帰るというだけです。
ハイ、簡単です。
持ってくるときの逆というだけのことですから、視覚的にも覚えやすいと思います。
拝見物を取りに部屋に入り、問答して、最後に茶道口でお辞儀をして薄茶の点前はすべて終了です。
点前の順序をすべて記憶しておくというのはかなりのボリュームがありますので、
- 今どの段階で
- 何をしているのか
を思い出す方がおススメです。
順番を記憶しておく方法はその手前だけでしか通用しない場合が多いので、ポイントとなる部分は記憶して、あとは ”するべきことは何か” を考えるようにした方が応用が利きます。
点前の順序のまとめ
何度も言いますが、結局のところお点前は
- 道具の準備
- 道具を清める
- お茶を点てる
- 仕舞う
- 道具を拝見に出す
これだけのことなのですが、実際のお点前では複雑に思えてきますね。
恐らくその理由は
「配置がそれぞれの段階で変わるから」
だと思います。
配置を理解すると、お点前を覚えるのがさらに簡単になりますので、次の機会では「薄茶点前の配置」について解説したいと思います。
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