湯返しをする点前か、しない点前かがややこしい 判断するためのルール【裏千家茶道】

風炉・釜・柄杓 お点前
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お点前では湯返しをする点前としない点前があります。
湯返しというのは、仕舞水をした後にすぐ釜の湯を汲んで再度釜に湯を注ぐ所作のことですね。

今回はどんな点前では湯返しをして、どんな点前では湯返しをしないのかを考える際に役に立つルールについて書いていきます。
また、なぜそういうルールになっているのかについても解説します。

よく言われる湯返しのルールは実はちょっと違っているという事もありますので、お点前で湯返しをするルールが曖昧な方にお役に立てると思います。

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湯返しをするしないのルールは畳に水指を置くかどうか

まずは湯返しのルールからです。

  • 水指が何かに乗っている時には湯返しをする
  • 水指を畳に置いている時には湯返しをしない

このルールを知っていれば99%以上の点前に対応できると思います。
ですが、やはり例外もありますのでそれについても書きたいと思います。

さて、一般的に「棚の点前の場合には湯返しをする」あるいは「柄杓を荘る場合に湯返しをする」なんてよく言われたりするのですが、これらの条件ですと例外の事例がかなり多くなってしまいますので、この覚え方は全然おすすめできません。

湯返しをするかどうかを判断するポイントは水指が畳の上に乗っているかどうかの方がわかりやすいですし、例外もほぼありません。

「水指が何かに乗っている時」というのは地板以外にも立礼棚なんかに乗っているときがあります。
ですので、もちろん立礼棚の点前でも湯返しがあります。

ではどうして「棚の場合」あるいは「柄杓をかざる場合」と覚えてはいけないのでしょうか。

棚を使っても湯返しをしない点前がある

地板の無い棚で、水指を畳に置く場合には湯返しをしません。

地板の無い棚には

  • 寒雲卓
  • 寒雲棚
  • 猿臀棚(えんびだな、えんぴだな)
  • 独楽棚
  • おつぼ棚
  • 香狭間棚
  • 円融卓

なんかがあります。

また、地板は在ってもそこに水指を乗せない五行棚の様な棚もあります。

これらの棚には柄杓をかざることができますが、かざるかどうかに関係なく湯返しはしません。
柄杓をかざるかどうか、と湯返しをするかどうか、点前手続き的にはあまり関係が無いという事になります。

ちなみに、地板の上に水指がある場合、柄杓をかざるかどうか関係なく湯返しがあります。

水指を畳に置いても湯返しがある【例外】

実は、畳に水指を置いている点前でも湯返しをする点前があります。

「風炉の長板一つ置き」の点前がそれです。

長板一つ置きは点前教本に載っていない点前ですので、習う事はないという方がほとんどだと思います。
ですので覚えておく必要は無いかもしれませんが、偉い先生に座っていただいたりする稽古ですと話しが出てきますので、頭の片隅に置いておいても良いかもしれません。

ちなみに、炉の長板一つ置きの点前では水指は長板の上にありますが、風炉の長板の一つ置きは風炉釜が長板の上にあり、水指は畳に置く点前になっています。

湯返しについて家元が解説しているページがある

ここまで書いてきて、御家元の一問一答で湯返しについて書いてあったなと思い出しました。
湯返しについて裏千家の御家元が解説しているページをネットで見ることが出来ます。

お家元と一問一答というページです。

100の質問に答えていただいているページですので、裏千家のお茶をしている方は一度は読んでおくと参考になると思います。
湯返しについて書かれている部分を引用します。

№38 棚を用いて点前をした時、なぜ湯返しをするのでしょうか。

棚を用いた場合、「湯返しをして柄杓の合の乾きをよくするのです」と覚えてしまいがちですが、棚の根本は台子にあると考えて下さい。台子地板の中に風炉、釜、水指、杓立、建水、蓋置、そして杓立には火箸、差し通しの柄杓が荘られます。これを総荘といいますが、この杓立に柄杓を戻す時、露を切る意味で湯返しをします。その姿があると思っていただいて結構です。
普通の棚の場合は台子・長板に準じて荘る、荘らないにかかわらず湯返しをします。ただし、小間に仕付けられた仕付棚、あるいは地板のない寒雲棚、寒雲卓、猿臂棚等、畳に直に水指を置く侘びた運びの点前では、棚に柄杓を荘る時でも湯返しはしません。

№88 五行棚では、仕舞付けが終わり、釜に水一杓を差した後、湯返しをしないのは何故でしょうか。

「棚に柄杓を荘る時には、必ず湯返しをするのが約束」と覚えると間違いが生じます。
水指が運びの点前の場合や、地板が無い棚の時は柄杓を荘る荘らないにかかわらず湯返しはしません。五行棚でも水指は勝手付に置きますね。これは水指が運びの点前の時は湯返しをしないという約束からです。但し、長板一つ置きは例外となります。

引用:裏千家のサイト お家元と一問一答

初めに読んだときにはこの解説は正直難しいなと感じました。
棚の根本である台子・杓立・侘びた運びの点前の話しの関係性がピンと来ていなかったからです。

湯返しをする目的は何か なぜこの解りづらいルールなのか

「畳に水指を置くときには湯返しをしない」というのがルールでしたが、湯返しのそもそもの目的と、なぜこんなルールになっているのか私見を書きます。

上で引用したように、お家元も湯返しは柄杓の ”露を切る意味” で湯返しをするとおっしゃっていますので、元々は荘る柄杓を乾かす目的で湯返しをしていたと思います。

とはいえ、いまでは棚に柄杓を荘るときでも湯返しをしないという場面がありますので、乾かすという意味よりももっと優先されるものがある、と考えられているのだと思います。
棚板が濡れるかどうかなんていうのは副次的要素だ、と。
これについてどう解釈したらよいのでしょうか。

柄杓を荘るといえば本来は杓立に差して荘りますので、そもそも杓立を置ける流れを汲む棚なのかどうかが重要という事だと考えられます。

  1. 地板がない  → 杓立を置けない
  2. 杓立を置けない→ 杓立がない
  3. 杓立がない  → 柄杓を(杓立に)荘らない
  4. 柄杓を荘らない→ 湯返しがない

という感じになるのかなと思います。

また別の視点では、水指を畳に置くかどうかがポイントになっています。
ルールにも水指を畳に置くかどうかが問題となっていますので、重要な意味があると考えるのが自然です。

水指が畳に置かれるという事には「わび茶」にとっては大きな意味があると思います。

運びの水指については偉い先生ほど非常にやかましいものですし、水指を畳に置いて点前をするというある種の「茶の湯における大きな転換点」が重視されるという意味合いなのではないかと感じています。

水指を畳に置くという行為に代表される精神性は、わび茶である千家にとっては非常に大きな意味があるという事です。

そう考えると、風炉の長板一つ置き(水指を畳に置く)では湯返しがあるという点にも納得がいきます。

ということで、今回は「湯返しをするのか、しないのか」問題について書いてきました。

引用した御家元の説明だけで充分だったような気もしないでもないですが、湯返しをするのかしないのか、よくわからないという方の参考になれば嬉しいです。

「湯返しをする点前か、しない点前か 判断するためのルール」という話しでした。

似たような話しに「竹の蓋置を使うのか、それ以外の蓋置を使うのか?」というのがありますので、それについてはコチラをご覧ください。

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