炭手前は順序を覚える以前に、炭道具の取り扱いについて知っておく必要があります。
炭道具の扱いがわかっていないと、稽古では先生に指摘される点が多くなり過ぎて、順番の説明などが頭に入ってきませんよね。
最低限の炭道具の準備の仕方、取り扱いを理解しておきましょう。
このページでは炭手前で使用する道具の扱い方を解説しています。
【炭手前】羽箒・鐶・火箸・香合・釜敷・灰器の扱い
炭手前用の炭は意外と高価ですし、お稽古で実践する機会が少ない人が多いと思います。
炭手前で使用する炭道具の基本的な扱いを、道具ごとに見ていきます。
持ち方、扱い方はそんなに難しくないですし、覚えておけば ずーっと使えるやり方ですので、この機会に炭手前の基本を覚えておきましょう。
【羽箒】 持ち方・注意点
風炉の時期の羽箒(はぼうき)は本勝手は右羽、逆勝手は左羽を使用します。
右羽(上の画像)というのは右側が広いタイプの羽箒で、左羽は左の方が広いです。
(羽の持ち手を手前にして、表面を上に向けた時の右左を言ってます)
持つときには、持ち手の一番手前の部分、上がナナメに作ってある部分を手の手根(掌のくぼみの手首側)部分に当てるようにして右手で持ちます。
持つ場所は、羽に近い方の糸部分よりも手前を持つようにしましょう。
この羽箒を使用して、風炉や炉縁などを掃くのですが注意点があります。
「羽がボロくならないように掃いて!」
羽はお稽古モノでも意外と高価ですし、羽枝の部分が割れてしまったりします。
割れたまま長く放置してしまうと直りづらいので、雑に扱うのはお勧めしません。
ってういうか直し方知っている人あんまりいないと思うので、大切に大切に使ってください。
炉壇にこすりつけるように「ザザザザーッ、ザリ、ザリ、ザリッ」とやるのはダメです。
それ、羽が削れてますよ?!
まるで天敵に襲われた鳥のような悲惨な(笑)羽にしてしまって先生に怒られる前に改めましょう。
貴重な鳥の羽ならウン十万することも珍しくありませんので。
掃く際には、羽の裏側を客に見せないように掃きます。
また、掃くときに使用する部分は、羽の半分から先の方を使うようにします。
【釜鐶】 取り方・置き方
鐶は釜の鐶付にかけて釜の上げ下ろしをするときに使います。
取り方は横に手をかけて取って、置くときは縦に手をかけて置きます。
釜に掛ける角度は手前で使用する鐶は90度かけて、真鍮の水屋鐶は180度回して掛けます。
鐶は火箸に掛けておいたり、炭斗の中に仕組んでおいたりして手前の準備をします。
【火箸】風炉・炉・飾火箸
火箸の種類は
- 柄の無い火箸 風炉
- 柄のついた火箸 炉
- 飾り火箸 風炉と炉の両方
火箸は風炉の時期と炉の時期で入れ替えます。
風炉では金属だけで出来ていて木の柄が付いていない火箸、炉には木の柄が付いている火箸を使います。
台子・長板で杓立てに入れておく場合には、飾り火箸を使用します。
飾り火箸は金属だけで出来ていて、頭部分に飾りがついているものが多いです。
「桑の実」とか「丁呂木」とか。
飾り火箸には炉・風炉の区別はありません。
差し通し柄杓(正玄形)みたいなものですね。
飾火箸の扱いは畳に箸先を付いて持ち替えをせずに、左手で扱って持ち替えるのが特徴です。
飾火箸は杓立に入れて準備しますが、他の火箸は炭斗に入れて持ち出してお手前をします。
炭手前で使用した後は必ずティッシュか何かで拭いて綺麗にしておきましょう。
【香合】必ず扱う 右手で取り置き
香合は持ったら必ず「扱う」のが約束です。
ここでの「扱う」というのは、「右手で取ったら必ず左手に乗せる」という事です。
蓋置の扱いに近いですね。取り置きは右手でしかしません。
台子や棚を使用する場合には羽、香合は荘っておきますが、運びの時には炭斗に入れて持ち出します。
風炉の時には白檀を3枚、炉の時には三角錐状の練香を1つ、香合の中に入れて準備しておくのが裏千家流のやり方です。
塗の香合に練香を入れる場合には、椿の葉を香合の中に入るサイズに切って、その上に練香を乗せます。
練香を焚いたら椿の葉は炭斗に空けて、香合を拝見に出します。
【釜敷】「紙釜敷」と「組釜敷」
炭手前の稽古で使う釜敷には紙釜敷と組釜敷が良く出てきます。
ちなみに箱炭斗に掛けてあるのは板釜敷です。
紙釜敷
紙釜敷は初炭で懐中から取り出して使用します。
紙釜敷の懐中の仕方はどっち向きだっけ?とか、懐中から出した後の置き方は?とかわからなくなるので、炭手前に共通するやり方を書きます。
紙釜敷の懐中の仕方
紙釜敷を懐中する時には、手前で釜を上げるときにどっちに移動するかを考えます。
風炉の本勝手のように右に釜を上げるのであれば、釜敷の「わ」を右側に懐中。
炉の四畳半切り本勝手のように釜を左に上げるのであれば「わ」を左側にして懐中します。
畳に置くときには、”わ”が反対に向くことになるのでややこしいですね。
紙釜敷に釜を乗せるときには短辺の”わ”の方から釜が乗ってくるというイメージです。
八炉の時も同様の考え方です。
紙釜敷の畳への置き方
紙釜敷の懐中からの取り出し方は、
懐中から取り出して、左手に渡して、右手もしくは左手で置くという所作になるのですが、なかなか理解しづらいですよね。
段階に分けて考えれば対応できます。
- 懐中から出す
- 左手で受け取る
- 置く
1、懐中からの出し方ですが、紙釜敷を受けるようにして下から持ち、親指を上にして自分の前に出します。
この時に紙釜敷の角がV字になって、親指が向こうに向くように前に出すと都合が良いです。
2、左手が右手と左右対称になるようにしてV字になっている角の左側を持ちます。
3、紙釜敷を左に置くときにはそのまま左手で置き、右に置くときには右手で左手の反対側の短辺を持って置きます。
懐中の仕方と、釜敷の置き方が自然にできると、炉の時期の八炉の炭手前の時にも役に立ちます。
要するに「釜はどっちにあげるんだっけ?!」ということさえわかっていればスッキリ理解できます。
ちなみに釜底が紙釜敷に乗る面は、紙釜敷を懐中している時には向こう側になっています。
組釜敷その他
組釜敷は籐や組み紐で編んだ釜敷で、後炭に使用します。
組釜敷き以外にも、竹の節を輪切りにしたものやその他の釜敷きもあります。
組釜敷の扱い方の基本は「釜の行く方へ打ち返す」です。
こうすると、炭斗に仕組んである際に炭の方へ向いている面が、釜の底に触れるようになります。
「畳は汚したくないなぁ~」と思いながらやれば自然にできます。
釜敷の扱いは考え方がわかれば簡単です。
ちなみに、箱炭斗に掛けてある板釜敷も同じ考え方です。
箱炭斗にかかっている時に炭がある方が釜付になります。
炭と反対側が畳付になります。
お茶というのは清浄を旨とするのが基本ですので、お手前や水屋仕事でもそれが生かされているのです。
意外と上手くできていますよね。
【灰器】持ち方・扱い
灰器は風炉・炉がありますが、扱い方の基本は同じです。
- 取り置きは浅くもつ
- 移動時は深く持つ
- 灰匙は横向きで移動
- 灰匙の向こう側を持つ
畳から持ち上げるときには灰器を浅く持って左手で扱って、右手を灰器の底まで手を入れて深く持ちます。
畳に置くときには、左手で扱って右手を浅く持ち直してから灰器を畳に置きます。
このように扱うと当然、灰器を移動するときには右手が灰器の下まで入って、深く持つことになります。
加えて、灰器に灰匙を入れて移動するときには灰匙の柄は右に向いていて、灰匙は横向き(灰にグサッと刺さってるイメージ)になっています。
その時に灰器を持つ手の位置は、灰匙の向こう側を持ちます。
注意点は灰器の扱いは「真之炭」の炭手前のときには違なる点がある事です。
真之炭についてはまた別の機会に。
ということで、「炭手前の基礎【裏千家】炭道具の扱い 羽箒・鐶・火箸・香合・釜敷・灰器」の解説でした。
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