お茶の稽古をしているときに先生から
「これは濃茶に使える茶碗ではありませんよ」
と指摘されたことはないでしょうか?
よくわからないうちはどこがいけないのだろう?と感じますよね。
濃茶の茶碗とはいったいどんな茶碗でしょうか。
この記事では濃茶に使える茶碗とは具体的にどのような物か、の基本を解説します。
濃茶に使える茶碗より、使えない茶碗を知ろう
濃茶茶碗というのは、単に「大きいから、これを濃茶茶碗にしよ~」なんてノリで決めるものではありません。
まず”濃茶に使える茶碗”を知る前に理解しておくべきことは
”濃茶には使えない茶碗”の理解です。つまり薄茶でしか使わない茶碗のことです。
ちなみに、流派によって異なると思いますが薄茶に使えない茶碗というのは特にありません。
薄茶というのは茶事の主役にはならないですし、濃茶よりも軽い(重量という意味ではない)気軽な物を使用するという考えがあるためです。
しかし、例えば国宝の喜左衛門井戸を薄茶に使う(自分が所持していると仮定して)という選択肢はなかなか考えづらいのでそういった場合は除きます。
なぜなら、国宝を薄茶の茶碗にというのはどうもシックリこないですからね。
「濃茶に使う茶碗はどれか?」を考える前に、薄茶にしか使えないという茶碗(濃茶には使えない茶碗)はどんなものかを知っておかなければいけません。
この”薄茶にしか使えない茶碗”を濃茶の時に使おうとすると、先生からツッコミが入ります。
そもそも、濃茶というのは茶事のメインであり、一番重要な部分です。その濃茶に使うのは気軽な茶碗ではダメという事になります。
濃茶で使用する茶碗というのは、薄茶で使用する茶碗よりも重厚な意味合いがある物を使用すると思ってください。
それでは、濃茶には使えない茶碗というのはどういった茶碗でしょうか?
- 絵のある茶碗
- 歴史の浅い所の茶碗
- 形が相応しくない茶碗
- 風格の無い茶碗
但し、流派によって考え方が異なったり茶碗そのものによっても異なりますので、詳しいことはご自分のついている先生に伺ってみるのが良いと思います。
ということで、濃茶に使えない茶碗とはどういう物なのか、よくわからないかたはぜひ参考にしてみてください。
- 安田道雄の茶碗は安いですが、とても上手いのでおススメです
絵のある茶碗 は濃茶に使わない
一見して直ぐに濃茶に使わないとわかるのが、色絵の仁清写(にんせいうつし)の茶碗です。
基本的にどんなに歴史が古くても絵が描いてある茶碗は濃茶には使えません。
仁清写は色絵が多いですが、銹絵の茶碗なんかも使えません(実際には仁清は無地の茶碗も作っているようです)。
また、彫りで絵や文字、文様が描いてある茶碗も絵のある茶碗と同様とみなします。
樂の茶碗によく見られる”数印”や”印尽くし”などの、作者の印が複数おされているものも文様に入ります。
それでは、無地の茶碗ならばなんでもOKなのでしょうか?
そうではありません。
後に述べる風格というものが重要になってきます。
歴史の浅いところの茶碗は濃茶に使わない
お茶の歴史はかなり長いですので、歴史というものがとても重要視されます。
例えば
- 高麗
- 唐津
- 萩
- 瀬戸(美濃も含む)
あたりの古いものでしたら基本的に濃茶碗として使う事ができます。
見出しに書いたの”歴史の浅い”というのは
茶陶(お茶のための焼き物)としての歴史ということであって、そこの焼き物の歴史という意味では無いです。
たとえば、珠洲焼というのは歴史はとても古いですが、茶陶としては使用されてきていませんので濃茶碗として使うのは難しいでしょう。
茶陶としての歴史というのは、古い茶会で”茶碗として”使われている歴史があるっていうことになります。
江戸前期くらいまでに茶陶として使われている焼き物ということになるでしょうか。
形がふさわしくない茶碗は濃茶に使わない
形が濃茶に相応しくないというのは
- 平茶碗
- 筒茶碗
基本的にはこの2種類の茶碗は濃茶には使用しません。
例えば、斗々屋茶碗は平斗々屋と本手斗々屋がありますが、平の方は濃茶には使用しないといわれます。
ほかにも、本手瀬戸唐津は濃茶に使うが、平たい瀬戸唐津は薄茶にとか言われたりというような具合です。
筒茶碗に関しては、見てスグに「コレは筒茶碗だ」とわかるものが多いですが、樂の長次郎あたりの時代は筒茶碗に見えるような茶碗もありますので、判断しづらかったりもします。
いずれにしても、筒茶碗と箱に書いてあるような茶碗でしたら、濃茶には使用しません。
他にも、形がちょっとうるさ過ぎるような茶碗も相応しくないといわれたりしますが、それは次に述べる風格にかかわってくるかもしれません。
風格の無い茶碗は濃茶に使えない
茶碗の風格なんて、なんだか非常にわかり辛いですが、これはメチャクチャ重要で最重要項目だと個人的に思っています。
風格を重視するなんて、あまり聞いたこと無いかもしれませんが…。
例えば
「唐津焼の絵のない無地の茶椀で、形は奥高麗のような形をしているが、全然風格がないなぁ。。。」
っていう茶碗なんかは、実際に茶事で濃茶碗として使用するのは難しいと思います。
やはり、お茶は濃茶が一番大事なところですので、それに見合う風格というような物が必要になりますね。
まぁ、稽古でこれを言う人はあまりいないかもしれません。
風格があるかどうかというのは沢山の良い茶碗を見たり、触ったりするうちに解ってくると思います。
そもそも茶碗についてよくわからない人に「風格ガー」と言っても、余計にわからなくなってしまいますので、あまり言ってくれる人はいません。
樂茶碗は薄茶に?
また、千家系統の流派では濃茶によく使われる樂茶碗ですが、流派によっては
「使わない」
もしくは、たえ使っても
「当然、薄茶に使う」
という流派も実際にあります。
とはいえ、樂茶碗と言われるものは本樂から脇窯、その他の個人が作っている楽焼きといわれるものまでいろいろあります。
「それらの物を同じ扱いにして良いのか」などの問題もあったりして複雑ですね。
そのへんの感覚は流派によって異なりますので、自分のやっている流派、先生のやり方にしたがって感覚を磨くのが良いでしょう。
私なんかは古い樂茶碗で濃茶をするのは悪くないと思うんですけどねぇ。。。
濃茶に使う茶碗まとめ(使えない茶碗)
濃茶に使える茶碗を考えるよりも、濃茶に使えない茶碗を知っておいたほうが理解しやすいです。
濃茶には使えない茶碗というのは
- 絵のある茶碗
- 茶陶としての歴史の浅い茶碗
- 形がふさわしくない茶碗
- 風格のない茶碗
お稽古の時に使おうとしている茶碗が濃茶に使えるものかどうか、自分でちょっと想像してみてくださいね。
濃茶に不向きの茶碗でも例外はあります
濃茶に使えない茶碗を簡単に挙げてきましたが、とはいっても実は例外があります。
こんなこと言うと余計にややこしくなりますが、上記で挙げた濃茶茶碗の条件は絶対のルールというわけでは無いと思います。
茶碗に対する扱いは使う人や、使う相手、状況によって変わってくるものだからです。
例えば、国宝の茶碗「卯花墻」は絵があるから濃茶にはダメだ。
なんて簡単に片付けてしまうわけにはいかないでしょう。また、
「この茶碗は物凄く気に入っている茶碗だからどうしても濃茶で!」
という場合もあるでしょうし。
ほかにも
「先生から頂戴したものなので、少し絵が入っているが濃茶に使いたい!」
なんてこともあるでしょう。
何にせよ例外というものはあるものです。
こういう所にお茶の難しさや楽しさがあると思います。まさに”茶のある”ところですね。
あなたが濃茶をするときにはどんな茶碗を使いたいですか?
ということで、今回は 濃茶の茶碗と薄茶の茶碗 違いは何?使える茶碗と使えない茶碗を解説という話しでした。
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