四君子というのは「蘭・菊・梅・竹」の四つの植物の事を言います。
”4つの植物を君子に例えた言い方”という事になります。
東洋画の主要な画題の一つです。
それだけだとカンタンすぎるので
茶道具や着物によく描かれている四君子(しくんし)を、それぞれの植物に関しても少し見ていきたいと思います。
しかし、こういうものって知らないと、全く見当違いな想像をしてしまいがちですよね。
茶席なんかで、「水指は四君子の文様なんですよ」っていわれた時に、君子が四人描いてあるのかな?って思っちゃったりしませんかね?
君子が4人ではなくて、植物が4種類描かれているのが四君子なのです。
ちなみに、似たようなモノに四愛がありますが、違いはこうなります。
ちなみに四君子との植物の違いは「竹」の部分ですね
- 四君子 菊・竹・梅・蘭
- 四愛 菊・蓮・梅・蘭
四愛についてはこちらの記事をどうぞ。
四君子は「蘭・菊・梅・竹」の4つの植物のこと
四君子は4つの植物の事を君子に例えて表現した言い方です。
その植物は
- 蘭
- 菊
- 梅
- 竹
この4つの植物は東洋画の画題として、草木を描く基本を学ぶとても重要なものだそうです。
植物ではありますが、これらの4つの植物の姿には気品があり高潔で、まるで君子のようだ、ということで四君子と呼ばれています。
そんな目で植物を見たことありませんが、そう言われると君子のような感じもしてきますね。
次は4種類の植物それぞれについての知識を少し深めていきたいと思います。
四君子の「蘭」
蘭は優雅な姿と香りから高貴な植物とされます。
人里はなれた深谷で清楚で控えめにひっそり美しく咲いているっていう感じですね。
さて、蘭と言えば黄庭堅(黄魯直)という人がいます。
「四愛」の中で出てくる一人で、黄庭堅は蘭でイメージされる君子の代表的な人です。
北宋時代の詩人・書家としてとても有名な人で、蘇軾の門下です。
また、孔子も蘭のイメージなんだそうです。
孔子が不遇な自分を山間でみつけた蘭に例えて読んだ有名な詩があるようです。
そんな君子の事を思い出させるのが蘭という植物です。
四君子の「菊 」
菊は年の最後に咲く花とされ、晩秋に咲く花です。
上品な香りを放ち、可憐で高貴でとても美しい姿です。乙女草という異名もありますね。
君子っぽい名前では 隠逸花 、隠君子なんていう異名もあります。
世俗に交わらず隠れ住んでいる君子のイメージでしょうかね。
菊でイメージする君子といえば陶淵明がお馴染みです。
陶淵明(365年~ 427年) は中国の六朝時代の人です。
日本だと古墳時代。仁徳天皇の時代あたりのようです。
ムチャクチャ昔の人ですね、陶淵明というのは。
さて、秋には陶淵明の「飲酒」という題の詩の一部が茶席に掛かっているのをよく見ます(飲酒って。。)
采菊東籬下 悠然見南山
「東の垣根で菊を採り ゆったりと南の山の方をみる」
この文句を見たことのある方も多いのではないでしょうか。
飲酒っていう題は「飲んだ時に思いついたまま書いちゃったよ~ん(酔)」って意味なんですかね。
陶淵明はかなりの呑兵衛として知られています。面白いですね(笑)
それと、菊は重陽の節句でもおなじみ、不老長寿の霊薬として信じられていました。
だから菊は決してお葬式とかの不祝儀専用の花なんかじゃありません。
そういうイメージしか無いと
「教養…(笑)」
って思われちゃいますから気をつけないと。
お茶やっている人にはそんな心配は無いかもですけどね。
また、隠逸花と言って思い出されるのは古渓宗陳の偈です
心空及第等閑看
風露新香隱逸花
心空及第して等閑に看れば
風露新たに香る隠逸の花
利休が居士号を賜った時のお祝いとして古渓宗陳がよんでいます。
菊に例えて利休の徳を称えているんですね。
四君子の「梅」
梅は冬の寒さの中をジッと耐え百花にさきがけて開花します。
二月になると各地で梅まつりが行われますよね。
梅は春の魁ですね。
香りも素晴らしく、古来たくさんの文人に愛されています。
長い下積みの冬の時代を耐え忍んできた、努力家で強靭な精神力を持った孤高の人というイメージができると思います。
中国の君子で梅を愛したのは林和靖ですね。
梅といって思いつく日本人は菅原道真ではないでしょうか。
二月二十五日に行われる北野天神さんの梅花祭がとても有名ですね。
梅花際の時期は恐ろしく寒いんですけど、その極寒のなかキレイに咲く梅を鑑賞できますので本当に風情があります。
呈茶席も出たりするので、ぜひ体験してみてほしいです。
四君子の「竹」
竹は折れず、曲がらずまっすぐに伸び、雪の降る寒い冬でもいつも緑色です。
その姿は節操、純粋さ、不屈の忍耐力、竹の空洞は謙虚さの象徴とされるようです。
竹といえば王徽之(おうきし)が此君(しくん)と呼んで竹の異名にもなってます。
「君(竹のことです)無しでは一日もいられないよ」的なことを言ったそうです(笑)、相当な竹フェチですね。
また蘇軾や白居易も竹を愛した文人として知られています。
蘇軾は先ほど蘭のところで黄庭堅の師匠として出てきた人です。「竹がなければ俗になってしまう」と言ったりしています。
四君子は「蘭・菊・梅・竹」 まとめ
ということで四君子というのは
- 蘭
- 菊
- 梅
- 竹
という4つの植物を君子に例えて表現したものでした。
ですので、「四君子蒔絵」といえばこれら四つの植物がすべて描かれている蒔絵のこと。
「四君子柄の着物」といえば、梅・竹・蘭・菊4つの植物の図柄が入っている着物という事になります。
四君子は四季の代表的な植物ということで、四季を表す場合があるそうです。
そういった事をパッと思い出せると、茶会の道具組を理解するときに役に立つんじゃないでしょうか。
ちなみに漢方薬では「四君子湯」という4つの優れた生薬が入った漢方薬というのがあるそうです。
とはいえ中身は梅、竹、蘭、菊などは入っていないようですけど。
ということで今回は 「四君子とは「蘭・菊・梅・竹」 着物や茶道具の文様にどんな意味が?」という話しでした。
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