「秋の七草」は茶席でもよく花入に入れられ、古くから日本にある7種類の花です。
お茶をやっているなら、秋の七草をパッと言えたりしたいですよね。
ということで今回は、秋の七草の覚え方とそれぞれの植物について解説します。
秋の七草とは 何の植物?
秋の七草というのは
- 萩(ハギ)
- 薄・芒(ススキ)
- 葛(クズ)
- 撫子(ナデシコ)
- 女郎花(オミナエシ)
- 藤袴(フジバカマ)
- 桔梗(キキョウ)
という日本の秋を代表する七種類の草花です。
”秋の” とはいっても意外と咲く時期にずれがあったりしますので、まったく同じような時期に咲くというわけではありません。
秋の七草は昔から日本で愛されている花ですので、現在での呼び方と昔の呼び方で違ったりして興味深いところです。
秋の七草の覚え方
お茶でも登場頻度の高い、秋の七草はスグに言えるようになりたいものです。
とりあえずは昔からある歌を暗記して秋の七草を覚える方法を試してみるのが良いかもしれません。
昔からある和歌でオシャレに覚える
「秋の野にある花を数えたら7種類あったよ」と詠んで有名なのは、奈良時代の貴族の山上憶良(やまのうえのおくら)です。
この人が詠んだので、21世紀の現代でも秋の七草といえばコレ!という事になってますので、歴史を感じますね。
「秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
その7種類の花は何なのか、というのを詠んだ歌が次に続きます。
歌をそのまま覚えれば秋の七草も覚えられます!
「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花また藤袴 朝顔の花」 山上憶良
(原文)「芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花」
「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」
五七七・五七七となる形式の和歌で、このスタイルを旋頭歌といいます。
ということで秋の七草の覚え方としては、万葉集の山上憶良の歌を覚えておくととても風流なのですが、ちょっと覚えづらいという人もいると思います。
他にもっと簡単な覚え方があります。
秋の七草の覚え方 「おすきなふくは」
お茶を始めたての頃に誰かに教わった覚え方で「お好きな服は」で覚えると良いよ、といわれて覚えたことがあります。
- お オミナエシ
- す ススキ
- き キキョウ
- な ナデシコ
- ふ フジバカマ
- く クズ
- は ハギ
現代人的にはこっちの方が覚えやすい気がします。
10回くらい唱えて、それぞれ何の花なのか思い出すようにすれば覚えられると思います。
が、優美さは全然ありません(笑)。
しかも尾花も朝顔も瞿麦も出てきませんので、予備知識というか物事を学習するうえで非常に興味深い周辺知識みたいなものを覚えるチャンスが全然ないのが残念ですね。
他にも 「ハスキーなおふくろ」などがあるようですが、個人的にあまり気に入りません。
という事でオリジナルを自作してみました。
【自作】秋の七草の覚え方「ふはくなおすき」 (お茶の人向け)
ここはお茶に関係したことを書くサイトですので、やっぱり茶道に関係する言葉で覚えたいところです。
ということで、
「不白なお数寄 (ふはくなおすき)」
と、してみました。
- ふ 藤袴
- は 萩
- く 葛
- な 撫子
- お 女郎花
- す 芒
- き 桔梗
”不白って、なお一層数寄の重要人物だよね” とか ”不白のことやっぱり好き!” みたいな感じで覚えられるかもしれません。
江戸千家さんのお茶をしている人にはかなりイイ覚え方かも(笑)
ややこしいか。。。
しかし、お茶の歴史の超有名人「川上不白」が登場しますし、少し知的なニオイもして、わりと良いかなと勝手に思っています。
川上不白は表千家七代の如心斎の弟子で、千家のお茶を江戸に行き広めた名人として、江戸中期のかなりの重要人物です。
千家系統のお茶をしている方はぜひ不白筆記を読んでみてください。
不白の偉大さが解ると思います。
さて、最後に秋の七草のそれぞれの植物についての解説です。
昔の名前と違うという件も解説します。
ハギ 萩 (秋の七草)
マメ科の落葉低木または多年草。
放っておいても毎年キレイに花を咲かせてくれますが、毎年強めに剪定するのが良い様です。
さて、萩は「生え芽(はえき)」を表すと言われ、上で挙げた歌のように「芽子」や「芽」と書いて(はぎ)と読む方が昔はメジャーだったようです。
秋の七草に詠まれているのは「山萩」の事だといわれ、山萩は一番見かけるスタンダードな萩です。
他に宮城野萩、木萩、白萩、円葉萩など、たくさんの種類があります。
ススキ 薄・芒 (秋の七草)
上に挙げた和歌の「乎花(おばな)」は尾花でススキのことです。
古名の尾花で呼ぶ人もけっこういますので、ススキの事だとわかりやすいです。
イネ科の多年草。
ススキは仲秋の名月の鑑賞には欠かせないアイテムですし、秋の風情を演出するには非常に便利な花です。
秋の茶席に登場することもとても多いです。
シマススキ、ヤハズススキ、イトススキなどがあります。
クズ 葛 (秋の七草)
マメ科の多年草で放っておくと蔓がはびこりとてもやっかいですので、わざわざ育てるという方はほとんどいないと思いますが、花は野趣のある蝶形の花でなかなか風情があります。
太く大きい根は”葛根”として生薬に使われ、茶道でもおなじみの葛のお菓子の材料になります。
奈良の国栖(くず)がくず粉の産地だったことから、クズと呼ばれるようになったといわれたりします。
ナデシコ 撫子・瞿麦 (秋の七草)
ナデシコ科の多年草。
上の和歌の「瞿麦」は(ナデシコ)と読んでカワラナデシコのことです。
繊細な花弁や葉が、大事に子供を撫でたくなっちゃうような気持にさせるという事で、撫子と名付けられたとかなんとか。
大和撫子、形見草、常夏と呼ばれたりもします。
常夏って名前は全然秋の感じがしませんが、確かに撫子は秋よりも夏に咲いているイメージです。
「瞿麦」は本来は なのか、今では なのかわかりませんでしたが、「クバク」と読む、と出てきます。
ですが、瞿麦(クバク)といえば、撫子の種子のことや唐撫子(カラナデシコ、セキチク)のことを指すらしいですので、エラくややこしいです。
オミナエシ 女郎花 (秋の七草)
オミナエシ科の多年草。
上の和歌の「姫部志」は(おみなえし)と読みます。ふつう読めませんが女郎花のことです。
男郎花(オトコエシ)の花に対して、柔らかい印象の花という事で、女郎花とつけられたといわれます。
お茶の世界では使わない花(禁花)の中に挙げられたりもしますが、ゼッタイダメというわけではないと思います。
男郎花よりニオイは少ないと思います。
フジバカマ 藤袴 (秋の七草)
キク科の多年草。
現在日本で見られる物の多くは、原種のフジバカマとは異なるようです。
原種の藤袴は背丈が2mほどにもなったりする、けっこう背の高い草です。
元々日本に自生していた藤袴は、見た目的には葉や花の色が違うという事なので、原種の藤袴も庭に欲しいところですね。
少し乾燥させた藤袴の葉には桜餅の様な香(クマリン)があり、かつては貴族が香料として使っていたようです。
葉っぱ袖に入れてを持って歩きたくなりますね。
キキョウ 桔梗 (秋の七草)
桔梗はキキョウ科の多年草。
日当たりの良い所に毎年咲いてくれる頼もしい花です。
上の和歌の「朝皃(あさがお)」は”朝貌”で、つまりは朝顔です。
なのですが、 ”昔でいう朝顔は桔梗のことだ” という説があり、今回の朝顔は桔梗の花の事だと言われます。
さらにややこしいこと言いますが、昔のお茶のエピソードで出てくる朝顔は桔梗ではない別の植物の事だったりするという話しもあって、いつでも桔梗の事だというわけでは無さそうです。
いずれにせよ今回の場合はキキョウの事ということになると思います。
個人的には白い桔梗もキレイで自宅に植えておく花として、とてもおススメです。
秋の七草の覚え方 まとめ
秋の七草を覚えるには昔からある山上憶良の和歌で覚えるのがおススメです。
「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花また藤袴 朝顔の花」
「芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花」
今とは違う呼び方をされる花もありますので注意が必要ですが、それも勉強になりますし面白味があります。
- 尾花 ススキのこと
- 朝顔 キキョウのこと
また、覚え方は「お好きな服は」とか「ふはくなおすき」なんかもありますので、楽しく覚えてみるのもいいですね。
という事で、「秋の七草って何? 秋の七草の覚え方」という話しでした。
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